北海道ハブ空港研究会

SKY MEETING `99
国際ハブ空港シンポジウム
平成11年10月14日

特別講演 「日本の航空政策について」

羽生 次郎氏(運輸省運輸政策局長)

※各国によって違う意味合い

 ハブ(拠点)空港という言葉は、各国によって意味合いが違う。航空の先進国である米国の場合、必ずしもいい意味ではとらえられていない。一つの航空会社が、特定の空港に八〜九割の発着枠を持ち、そこで路線網を形成するなど、その会社の圧倒的な優位性を示すもの。運賃が割高になるなど「独占的」になってしまう危険性がある。

 一方、欧州では、トランジット(乗り継ぎ)客をどう取り込むかが大きな意味を持つ。需要があり、路線が整備されていても、ヒースロー(英国・ロンドン)やシャルル・ドゴール(フランス・パリ)は、ハブと呼ばれていない。最も典型的な空港とは、KLMオランダ航空の拠点、オランダ・アムステルダムのスキポール空港。アジアでは、路線網が充実されている空港をハブと位置付けているようだ。

※まず自国の需要で路線整備

 アジアでは、四千m級の滑走路四本を抱える空港の建設計画が浮上するなど、太平洋地区の潜在的な航空需要を見込み、空港建設が盛ん。いずれも、アジアの一大空港を目指した計画だが、ここ数年の厳しい経済情勢から、予想ほど需要が伸びていないのが現状。一部を除き、空港の建設計画だけが独り歩きし、施設の許容量が過剰のなることが予想される。今後は、運賃や使用料などの「安売り」、自国の客の「囲い込み」が発生してしまう可能性が高く、運賃面や路線網の大きな差がない限り、いくら空港を大きくしても拠点にはなり得ない。

 こうした中、まずは地域の需要を十分に賄える路線網を整備した空港をつくることが大切。日本の空港では、他国の客を取り込まなくても、十分な需要がある。北海道経済が厳しいと言われる中、新千歳の乗降客数は順調に増えている。自国の需要で路線の整備を図った上で、徐々に乗り継ぎ客や他国の客を増やしていくことも十分に可能だ。

 新千歳では、国際線の乗降客が1993年度から98年度までに40%以上も増えるなど伸びが順調。とりわけ、98年度は、外国人のうち3分の2が台湾からのチャーター便によるもの。片道3百便以上が就航するなど、定期化しても十分に採算が見込める路線といえ、積極的に本道観光を売り込んでいくことが、新千歳の発展につながる。中国との関係から交渉は難航が予想されるが、新しい国際線の開設では、台湾が狙い目_といえそう。

※地域空港の主役になれる可能性

 また、新千歳国際化のカギとして、KLMオランダ航空のアムステルダム線のように、国内の2都市を結ぶ路線の運航を考えなくては。ただ、新千歳から欧州に向かう場合、航空路の問題から、新潟まで南下しなければならず、燃料と時間のロスがあるのも事実。ロシアとの航空交渉次第だが、航空路の見直しなど、ソフト面に目を向けることも新千歳の発展につながるのではないか。

  新千歳に就航する国際線を増やすには国内、海外の航空会社に、国内の2都市を結ぶ路線を考えてもらうことだ。可能性があるとすれば、大阪や名古屋と新千歳を結び、米国西海岸のロサンゼルスに向かう路線。もう一つは、名古屋や福岡を経由し、南アジアに向かう路線。新千歳は、日本の地域空港の主役になる可能性と能力があり、今後も地道な取り組みを継続することで、さらに魅力が出てくると考えている。

(苫小牧民報 1022日付)

 

 

基調講演 「日本の航空を左右する新千歳の国際ハブ化」

杉浦 一機氏(航空アナリスト)

※航空機の性能の向上も

 新千歳を北のハブ(拠点)空港にすべきという理由の一つは、空港を充実させることが、本道の産業や経済に大きなプラスになると考えているため。もう一つは北海道に限らず、日本の利用者や首都圏の住民のためにもなるという、信念に近いものがある。

 新千歳では現在、新しい国際線の誘致に向け、頑張っているが、米国のシカゴ空港を例に挙げてみたい。シカゴ空港は1987年当時、国際線の直行便はロンドンのみだったが、99年には欧州各地の7都市を結ぶ空港に。こうした成長の要因の一つに、航空協定の自由化が考えられる。両国や大陸間の空路について、政府の航空交渉にかかわらず、航空会社が需要に合わせ路線を結ぶことができるようになった。もう一つは、B767型機など双発機の運航規制の緩和。ETOPS(双発機による長距離進出運航実施承認審査基準)が昨年3月に「120分ルール」が「180分ルール」に変更されたことが大きい。

 双発機は、一方のエンジンにトラブルが生じた場合を考慮し、海上飛行では「120分以内」に、空港に着陸できるような経路を飛ばなければならなかったが、航空機の性能の向上などから「180分以内」に変更。陸地に沿った遠回りの経路ではなく、双発機が海上を運航できるようになった。ある程度の需要があれば、中都市でも直行便を運航させることが可能で、航空機の性能の発展も、新千歳のハブ化に結び付く。

※空港の性格を変える

 本道経済を盛り上げるため、積極的な活用が求められる新千歳に対し、首都圏や関西地区の空港は、発着枠がほぼパンク状態。関西国際空港は、2期工事で建設費約3兆円がかかるとされるが、新千歳は2本の滑走路とターミナルビルの建設で約8百億円。運用コストが、はるかに割安な空港にできるはず。東京や大阪の空港は、ターミナル空港に徹してもらい、用地の確保が比較的容易な新千歳や名古屋、九州の空港をハブに。乗り継ぎ客を重視した施設を備えるなど、空港の性格を変えていかなければならない。

※大変革の航空業界

 航空業界の現状をみると、世界の空は劇的な変革期を迎えた。大手航空会社は、経営面などで提携するアライアンスを展開、過保護にされていた日本の航空会社も、独自の戦略を早めに構築しなければ。

 また、欠かせないのが国家レベルの空港整備。首都圏などの空港は、発着枠だけでなく、いかに安い着陸料を提示できるかが使命になる。このほか、航空と空港の整備の一本化も重視してほしい。日本では、建設は空港が行い、それをどう使うかは民間の航空会社の問題という意識があるが、世界の拠点となる空港では、航空会社だけでなく、空港整備にも力を入れている。一本化しコスト削減を図ることが、航空会社の競争力を高めることにもつながる。

※新千歳乗り入れのメリット

 新千歳のハブ化に向けた提言として、地方空港に国際線を開設するため、航空会社に対し優遇策を図ることも必要。また、新千歳、九州地区の空港の国際線については、2国間の航空協定の枠外で暫定的に運航できる_という特例を与えてはどうか。日本の乗り入れている航空会社が、成田など他の空港の発着枠を減らす必要がなく、乗り入れの大きなメリットになる。新路線開設の可能性はぐっと広がるはずだ。人と物の流れを変えるため、新千歳の果す役割りは大きく、北海道の経済に大きな波及効果があるといえる。

(苫小牧民報 1023日付)



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