New「超音波検査こぼれ話 vol.4」

東京慈恵会医科大学 放射線科 辻本 文雄

 第2の聴診器と呼ばれて久しい超音波検査ですが、各種画像診断法におけるBモード法の位置がほぼ確定するにつれて、検査技能の向上に対する意欲が薄れて来つつあるようです。それは、あたかも、胃・大腸2重造影の検査技術の浸透とともに、全体の技術レベルが低下したかの如くです。
 先駆者の高等な技術が後継者に円滑に伝搬しにくいのが現状であります。教育機関である大学病院でさえ、技術を伝授する機能に乏しく、また卒後教育の役割を広く一般に開放しているとは言い難いと思います。
 視診、触診、聴診、打診の技術レベルの低下が目立ちます。一例を上げますと、子宮頸癌の患者さんが腹痛を訴えたために内科を受診したところ、腹部単純X線写真をある内科医がオーダーし、左上腹部に小腸ガスが存在するためイレウスの診断を下しました。放射線科治療部にも通院していた患者さんですので、私も診察しました。直腸診では子宮頸癌の左側方向への進展を認め、左背部の叩打痛があるので、左水腎症を疑い、直ちに超音波検査を施行しました。CRPなどの血流データは炎症所見陽性でしたので、左水腎症に感染を伴って、麻痺性イレウスが起ったものと思われました。内科受診時のカルテを拝見致しますと、直腸診はされておらず、また触診、打診も不十分でありました。
 最近の傾向として、診察が不十分で、超音波検査とCT検査をペアで、あるいはCTのみをオーダーする臨床医が著しく多いことに気づきます。さらに、医療制度の変革とともに、生理検査としての超音波検査の点数が、いわゆる「まるめ」の内に入ってしまうため、検査自体を放棄してしまう傾向も見受けられます。CT、MRIはレントゲン部門に入るため、保健点数が算定されるので、とにかくオーダーするといった傾向にあります。このままの状況ですと、超音波の診断技術の劣化は消化管2重造影の技倆低下と同様になるのは必死です。
 読者の皆様はどのようにお考えになりますか? ご意見をFAXまたはE−mailにてお寄せ下さい。

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超音波こぼれ話

 超音波診断はリアルタイムで行われるというのが臨床的に重要なことであり、今回は超音波診断のダイゴ味といえるような症例を紹介する。
 48歳の男性。内科外来にて、軽度の腎機能低下を指摘され、ルーチンの腹部超音波検査が依頼された。ここで腎のスキャンを行う前に腎の超音波像を把握しておく必要がある。正常腎の超音波像は、エコーレベルの高い腎中心部エコー(腎洞内の血管、腎盂、腎杯、神経、脂肪などにより強い反射が生じ、central echo complex、略してCEC とも呼ばれる)があり、腎実質は肝のそれよりエコーレベルが低いか等しい。さらに腎実質では皮質よりエコーレベルの低い髄質を認め、皮髄境界を弓状血管が走行しており、弓状血管はスキャンのされ方により、2本線(tram-line)であったり、近接する2点であったりする。弓状血管より末梢はBモード像では認識できないが、カラードプラとくにパワードプラでは小葉間動静脈も良く見える…等々。このようなことを頭に描きながら、腎をスキャンしてみる。患者さんの腎髄質は皮質よりエコーレベルが高く、高エコーとなっており、一部音響陰影も出現している。
 これは、いわゆるhyperechoic medulla の所見であり、音響陰影も出現していることより、石灰化を来たしていると考えられ、medullary nephrocalcinosis の診断がつく。この原因疾患は(表)の如く、様々なものが鑑別に上げられる。 これで超音波検査を終了し、medullarynephrocalcinosis の診断とし、その鑑別疾患を上げるのは、スクリーニングとしての超音波検査の域にとどまる。さらにリアルタイムの利点を生かし、精査としての超音波検査を行なえば、確定診断をつけることが可能である。
 実際、私の経験上腹部領域の大方は超音波検査のみで確定診断がつくのである。 そこで、次にどうするか。プローブの切り換えスイッチを押し、高周波のものに変化させて、頸部を 観察してみる。はたして、甲状腺左葉、下極側の背側に接して、楕円体状の低エコー腫瘤を認めた。
 これにより上皮小体の腺腫であることが判明した。検査中、上皮小体*が腫大しているかも知れないということを念頭におき、その上で頸部を精査しなければ、hyperechoic medullaの原因もわからなかったわけで、これは超音波検査が有用であるということを示しす一方、検者の技量により、その診断が著しく左右されるということも示している。

*内科系では副甲状腺というが、正確には上皮小体が正しい。というのは、副甲状腺とは甲状舌管が 降下して甲状腺を作るとき、その途中に甲状腺と同じ組織が遺残することがあり、これを副甲状腺(accessory thyroid)と呼ぶからである。

hyperechoic medulla(腎髄質高輝度エコー像)をきたす疾患

「超音波実習テキスト」(小社刊)より

原   因 病   理 疾 患 名
高尿酸血症 尿酸塩の尿細管内沈着 痛風腎,Lesch-Nyhan Syndrome
腎随質石灰化症 石灰沈着 副甲状腺機能亢進症,尿細管アシドース(Wilson disease,giycogen storage disease type XI) ,
サルコイドーシス,ビタミンD過剰症,骨髄腫,乳頭壊死,medullary sponge kidney,ミルク-アルカリ症候群,クッシング症候群,シェグレン症候群,Bartter's syndrome
低カリウム血症 間質の線維化 原発性アルドステロン症,Pseudo-Bartter's syndrome

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