航空機産業に関するシンポジウム

基調講演 「世界の航空機産業の展開と我が国の戦略」

中橋 和博氏(東北大学大学院 工学研究科航空宇宙工学専攻 教授)

 はじめに  

 私の専門は流体力学ですが、今日は「世界の航空機産業の展開と我が国の戦略」という題目で話をさせて頂きます。私がこのようなテーマに携わるようになったきっかけは、現在、東北大学で航空機に関することを教えているのですが、優秀な学生が集まってくれており、このような学生と接していると、「我が国も航空機産業を興さなくてはいけない」という観念にとらわれたからです。そこで4、5年程前からいろいろな方と議論を重ねてまいりました。今回、若干私の専門とは異なりますが、そういう観点から航空機産業についてのお話しをさせて頂きます。

【世界の航空機産業の歴史】

 私は大学で「航空機設計」を教えておりますが、毎年、講義の最初にライト兄弟の初飛行の写真を見せて、若干の話をします。と言いますのも、ライト兄弟の偉業というのは非常に重要なもので、そのことを知ってもらいたいという事と、もう一つの目的は、当時、ライト兄弟は名声やお金儲けのために飛行機にチャレンジしたのは確かですが、ターゲットをもつことで、それを具体化していくエネルギーが生まれ、あるいは達成のときの喜びを得ることができる、ということを学生に知ってもらって、学生もこれから自分なりのターゲットを設けて進んで行って欲しいということを伝えるためです。今日もライト兄弟の飛行機に引き続き、まず、代表的な飛行機の紹介をさせて頂きたいと思います。
 
 世界初のジェット旅客機は
1952年路線就航した「コメット」(英国製)です。ジェットエンジンが出来たのが1940年前後ですから、十数年でこのようなジェット旅客機まで仕上げているのです。当時の航空機の発達は非常に勢いがありました。ただ残念なことに、この飛行機は3度ほど墜落しています。その原因を調べると、地上と空の間を行ったり来たりする間に疲労破壊が生じて、その結果、空中分解してしまったということで、貴重なデータを残した飛行機とも言えます。1969年には、ボーイング747が初飛行しています。現在、我々がよく乗る機会がある飛行機ですが、考えてみると非常に古い飛行機でもあります。但し、国内で現在飛んでいるジャンボジェットは、747−400というもので、1988年から開発生産されているものです。1995年からは777という飛行機が就航しています。機体長に関しては747より若干大きな飛行機です。エンジンも直径3mの大きなものを積んでいて、最近は日本とアメリカの間をかなり頻繁に飛んでいます。コンコルドも音速の2倍の速さで飛ぶ飛行機で、1969年にジャンボジェットと同じ頃に初飛行をしています。残念なことに数年前に運行中止となってしまいました。

 少し変わったものとしては、F117というステレス戦闘機があります。
1991年の湾岸戦争の時にマスコミに取り上げられて話題に上ったのですが、実際に初飛行したのは1981年で、それ以降は19867年まで殆どの人が知らなかったという、機密性が高く保持された戦闘機です。レーダーに補足されにくい形状をしていて、私の専門である空気力学の立場からいうと「なぜ、これが飛ぶのか」という気がしますが、コンピュータ制御のおかげで、このような飛行機が飛ぶことが出来るようになった次第です。同じコンセプトを爆撃機に持っていったのがB2という飛行機で、これも従来の飛行機と違って非常に変わった形をしています。ひとえにコンピュータの進歩のおかげとも言えるわけです。
 

 国内では、零式戦闘機が戦前に作られ、
1962年からYS11が作られています。残念ながらこの飛行機は180機ほどで生産中止になっております。それから、1971年に初飛行したC1という飛行機があります。これは川崎重工が中心となって作ったものです。現在、その後継機をCXと呼んでおりますが、2002年から開発が始まり、現在はほぼ基本設計が終わって、これから製作段階の設計に移ろうというところに来ています。民間機としては、三菱、川崎、富士重工が、それぞれいろいろな機体を作っていますが、ひとつはME300が上げられます。この飛行機は1977年に初飛行しており、トータルで三菱重工として101機を生産し、1988年にビーチ社に全てを移管しました。なかなかセールスが上手く行かず、ビーチ社に移管したわけですが、その後は非常によく売れていて、現在、日本の防衛庁もこの飛行機をアメリカから輸入しているという、おかしな現象になっています。こういう点からも、飛行機というのは単に技術的な問題ではなく、それを「如何に売るか、如何にサービスするか」が重要である、ということを思い知らされる事になりました。

皆さんご存知のように、航空機メーカーというと、一番有名なのはボーイング、そして欧州連合が創っているエアバスがあります。この二つの次に続くものとして、ボンバルディアというカナダの会社が、ここ10年程で急速な進展を示しています。特によく売れたのがCRJ−200という50席程度の小さな機体です。我が国においても、フェアリンク等がこの機体を使って運行しています。その後、CRJ−700(70席)、CRJ−900を順次作っています。それと同時に、DASH8というYS11と同じような形態の飛行機を、かなり古くから手がけており、最新のものとしては、DASH8−Q400が国内では全日空関係の会社に納入されています。また、グローバル・エクスプレスという機体はビジネスジェット機ですが、特に長距離を飛行できるような設計になっています。航続距離が1万2千キロと言いますから、ちょうど日本とアメリカを充分に飛ぶことが出来ます。この主翼の生産は三菱重工が担当しています。それをカナダまで運んでトロントで組み立てているのです。

世界第4位の航空機メーカーとしては、エンブラエルというブラジルの航空機メーカーがあります。1996年までは国営企業だったのですが、その後民営化され、それと同時にERJ145、135を開発し、940機ほどの受注をして非常に成功を収めています。それに引き続き、最近ではERJ170〜195までのシリーズを展開しています。この機体については、川崎重工がかなり重要なパーツを作っていると聞いています。

欧州連合のエアバス社で現在作っているのは、A380という非常に大きな機体です。2000年に開発着手し、来年には初飛行する予定です。総2階立ての飛行機で、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミー全て合わせると555人、ファーストクラスをエコノミーに変えると、更に多くの人数を運べるような非常に大きな機体です。我が国のメーカーからは、この航空機の大きなパーツを持っているところは少ないのですが、いろいろな部品に関して参画しています。それに対抗して、アメリカのボーイング社もいろいろな航空機を検討して来ています。最初にボーイングが主張していたのは、747−400を更にエクステンションして、747EXを作り、A380に対抗しようというものです。ところが2001年に急に、747EXの代わりとしてソニッククルーザーという飛行機を作るとアナウンスしました。普通の旅客機は、だいたいマッハ0.8から0.85で飛んでいるのですが、それを音の速さギリギリまで上げてしまうという非常に斬新な飛行機です。空気力学では「音の壁」ということからも、音速近くのスピードで飛ぼうとすると、非常に大きな抵抗を受けるのですが、この旅客機は非常に薄い翼を採用しており、このような翼ではマッハ0.98程度で飛ぶと、むしろ従来の飛行機よりも効率の良い領域があるという事がわかり、それを利用して飛ぼうというものです。ところが2003年に突然この飛行機をやめて、従来型の7E7の開発を宣言し、現在、開発着手に入っているところです。2004年には全日空が50機ほど買うことを表明し、2007年か2008年には就航予定です。この機体には日本のメーカーが35%程度の部品担当することになっています。特に、これまで主翼製作はボーイングがなかなか手放さなかったのですが、今回は三菱重工に作らせるということです。また斬新なのは、複合材を多用して、できるだけ軽く造るということを念頭に置いています。この複合材は日本の素材メーカーである東レのものを使いますから、かなり日本の技術力が試される機体になります。
 もう一つ、我々仲間うちで非常に興味深く思っているのは、昨年12月17日のライト兄弟100周年に合わせて、ホンダ・ジェットが初飛行しました。これは小型のビジネスジェットですが、なかなか斬新な形態をしており、売れるかどうかは別として興味深く思っているところです。

【数値流体力学とは】

 私は空気力学を専門としておりますので、その観点から少し説明させて頂きます。空気の流れを記述する方程式は既に古くから知られていて、その方程式を解くことが出来れば流れの様子もわかります。しかしながら、かなりやっかいな方程式で、その結果、何百年も紙と鉛筆で理論的な研究が進んできたわけです。それに対して、ここ20〜30年、コンピューターが非常に進歩して、この難しい方程式も解けるという時代になって来ました。これを数値流体力学と言いますが、それによって最近の飛行機は非常に高性能なものになっています。例えば、777の機体は、かなり数値流体力学という手段を使って設計されています。特にマッハ0.8〜0.85で飛ぼうとすると、衝撃波が局所的に発生する等の関係で難しいものですが、数値流体力学を使って翼を設計することで、効率良く飛行できる洗練されたものになっています。他の部分についても、数値流体力学が重要な設計のツールとして役立っています。

我が国の数値流体力学の現状をみると、飛行機を作っていないにも関わらず、世界的なトップレベルに食らいついて行っていると自負しております。ただ残念なことに、それを使って機体を設計するチャンスがなかなか無いということで、それもあって私はいろいろな所で「国産飛行機をぜひとも作ってくれ」とお話ししているわけです。

この数値流体力学の発達は、航空機開発で先行している欧米に追いつくチャンスでもあります。飛行機を作るためには風洞設備が重要ですが、欧米の大きな設備に比べて日本にはそれほど大きな設備がなく、そういう意味ではハンディがありました。しかしながら、数値計算が発達してくると、そのように大きな設備なしに性能の良い航空機が作れますので、ある意味ではこれからチャンスではないか、と思っております。

【航空機産業の見込み】

 次に、航空機産業あるいはエアラインの見込み等についてお話ししたいと思います。1903年に初めて飛行機が飛んでから数十年前までは、飛行機はとにかく「高く、速く、遠くまで飛ぼう」という事を追求して発達して来ました。それが最近になって、「大量に運びたい」「超音速で飛びたい」「小さな飛行機でもっと便利に飛びたい」等、非常に多様性に富んだものになって来ました。それに従い、航空機産業においても、いろいろな可能性を議論しているところです。数年前にNASAのかなり偉い方が、アメリカの航空宇宙学会で講演された時のキーワードが「航空機にもルネッサンス」という事でした。航空機にも改革が必要である。ここ何十年もジェット旅客機はあまり形が変わらずに進んで来ましたが、そろそろ従来のコンセプトを離れて、いろいろな形態を考えてみようというお話しでした。そのような時代に入ったかと思います。それを可能にしたのも、コンピュータが発達したお陰ではないかと思います。

 さて、航空旅客の成長見込に関して、ボーイングとエアバスの統計資料を掲げていますが、どちらも非常に大きな伸びを示しています。2001911日のテロにより、若干鈍っていますが、ボーイングにおいては今後年率5.1%、エアバスも年率4.7%の伸びがあるだろうと予測しています。そういう事から、航空旅客の成長は非常に堅実であり、それに関した産業は非常に大きなビジネスチャンスであることが言えます。

 世界の航空旅客のシェアは、エアバスの調査によると、現在、約26%がアメリカ国内の旅客であり、ヨーロッパが9.5%、アジア・パシフィックが14%になっています。それに対して20年後は、トータルで2.5〜3倍になり、その中で一番大きなシェアを占めるのがアジア地域であるという予測を出しています。アジアは大きな人口を抱えていますし、地理的にも多くの島や半島があり、航空機にとって非常に重要なマーケットです。また、これから益々アジアの人たちの所得が増えることが予測され、所得が増えると旅行客も増えますから、そのことからもアジアのマーケットは非常に大きいと言えます。エンジンメーカーであるロールスロイスも、航空機の納入について今後どこが一番重要なマーケットであるかを予測して、それはアジアであるという結論を出しています。

【欧米の航空戦略】

 日本航空宇宙工業会の統計を見ると、航空機だけでなく宇宙も含めた販売量ですが、アメリカがダントツ一番で、次にヨーロッパ、日本は非常に小さなシェアしか持っていないという現状です。アメリカとヨーロッパは、航空宇宙産業を非常に重要視しており、それぞれグローバルリーダーシップを取るために、いろいろな戦略を練っています。20011月には、ヨーロピアン・エアロノティクスという組織が2020年に向けてのビジョンを発表しています。それに対抗して、米国でも今後の戦略を発表していますので、それをご説明したいと思います。

 まず、ヨーロッパのビジョンですが、報告書の最初に、『今日の欧州の航空機産業の成功は早い段階での戦略により獲得し得たものである。種は1960年代にまかれ、今がその収穫の時期である。エアバスは世界で2大民間航空機メーカーに育った・・・』と書かれています。これは何を言っているかといえば、1960年から1970年にかけてエアバスを結成していますが、当時、大変苦労して結成し、更に作った飛行機がなかなか利益を出すことが出来ませんでした。ですから20年程赤字でエアバスを育てて来たという経緯があります。その結果、現在ではボーイングに肩を並べる、あるいは販売機数ではボーイングを上回るほどになっております。そういう意味で、航空機産業は非常に長いスパンで考えなければならないし、戦略的に考えて行かなければいけないという事を、如実に示しているといえます。ヨーロッパのビジョンでは、これを更に伸ばして、2020年には米国を凌ぐ世界ナンバーワンになるのだという事を謳っています。航空・宇宙というのは、単に民間機だけでなく、安全保障の面でも非常に重要ですから、そういう観点からも、このようなビジョンを出しているのかと思います。

 それに対抗して、米国も同じようなビジョンを1年遅れで出しています。要約としては、『航空宇宙産業は21世紀の米国リーダーシップとパワーの中核となる。・・・U.S.の航空宇宙産業が今日のリーダーシップを保ち、今後のリーダーシップを確固たらしめるためには、米国航空宇宙産業の健全性を保持することが重要。』という事です。同じように、NASAも『アメリカの生活レベルを更に高めるためには、航空宇宙産業が大事である』と述べています。

【アジア製旅客機に向けて】

 ヨーロッパ、アメリカのビジョンに対して、アジア諸国はそのような議論をした事が余りありません。航空機は大変重要なものであり、「航空路はグローバル経済の幹線道路である」と言われるわけですが、その機材を全て欧米に頼っている状況では、安全性や信頼性というものを全て欧米に握られている事になります。また、「知的」労働者を雇用するのが航空宇宙産業であると言われます。この知的労働者は航空宇宙だけでなく、他にも大きな波及効果を持っています。しかし、アジア諸国間に、そういうものを確立しようという共通のビジョンがないのが現状であります。

 では、アジアでなぜ旅客機を作らなければならないのか。これはいろいろな議論があります。先程も申しましたように、まず、アジアの航空旅客の増加。そして空の交通に対する安全性や信頼性のためにも、いつまでも欧米に頼るのではなく、自分たちで管理・制御できなくてはならないということ。日本も殆ど全ての機体が欧米製という状況です。また、航空機産業は知識出現型社会を確立するためにも、是が非でも必要であるということ。そして、若者にやる気を出させるためにも、航空機や宇宙産業は非常に重要であると考えています。

 具体的には、どのような飛行機を作るべきか、という事ですが、東京都主催による「アジア大都市ネットワーク21」では、まず、アジアと一緒にやりたいと考えています。そのためには、あまり小さすぎても意味がありません。一方、非常に大きな機体は開発リスクが大きく大変ですから、技術的・商業的に実現可能なサイズであり、アジアの需要にも応えられるものという点から、100席程度の機体が良いのではないかという意見に集約されています。ボーイングやエアバスは、100席以上の機体で厳しい戦いをしています。それに対して、カナダやブラジルの会社は50〜100席の機体を競って開発しています。ですから、その端境にある100席前後のところが非常に面白いのではないかと。そこで、以前から東京都の委員会の中では、100席を狙おうと主張しております。

 では、日本に本当に航空機が作れるのか、あるいは日本が作って、どのようなアドバンテージがあるのか、との疑問も湧いてくるかと思います。現在進行中のプロジェクトを見てみると、先程もお話ししましたが、防衛庁で軍用貨物機(CX)を開発しています。これは旅客機では200〜300人乗りの比較的大きな機体に相当します。また、軍用パトロール機(PX)も同時に開発が進んでおり、旅客機では150人乗りに相当します。2003年から経済産業省でスタートしたのが、30〜50人乗りの「環境適合小型ジョット旅客機」です。三菱重工が中心となり、2007年に初飛行を目指しています。もし、これが上手くいって、マーケット的にも受け入れられる余地があれば、是非とも販売して行きたいという事で、YS11以来の非常にインパクトのあるニュースになりました。同じく経済産業省が進めているのが、石川島播磨重工が中心の企業による「環境適合型ジェットエンジン」の開発です。また、ホンダ・ジェットがビジネスジェットを初飛行させて、現在、ビジネス展開するかどうか議論しているところです。また、研究としては、SSTという超音速の旅客機の研究も続いていますし、VTOLという、ヘリコプターと同じように垂直に離着陸できる飛行機の研究も、宇宙航空研究開発機構(元航空宇宙技術研究所)で進められています。

日本の強みは何かといえば、まず、緻密な製造業が上げられます。他の国に真似できないものがあろうかと思います。そして最近、複合材が航空機で重要な部材になっていて、韓国や台湾もそれぞれボーイング等の下請けとして作っていますが、この複合材は、素材から製造までの総てを網羅して日本でカバーすることが出来ます。これは非常に重要なポイントです。2週間前、自動車産業を引き合いにした日経の記事によると、自動車は鋼板やガラス、アクリル樹脂などいろいろな部材で作られているのですが、それらを総て合成樹脂で整形することも考えているという事でした。国内に、素材企業と組立企業が一体としてあるという事は、非常に大きなアドバンテージになるのではないかと思います。

更に、航空電子装置やロボット工学も非常に盛んですし、計算科学(数値流体力学等)も強い力を持っています。

【アジア製旅客機への私的ビジョン】

 では、アジア製旅客機をどのような形で作るのかという事で、私的ビジョンを作って見ました。防衛庁のCX、PXは2007年に初飛行を予定しています。経済産業省も2007年に初飛行を予定しています。最近、この30〜50席というものを、もう少し大きくしようという意見も出ており、機体に関してはこれから変更になるかも知れません。それらを見据えて、アジア製の100席程度の旅客機を、できれば今年度の概算要求に乗せたかったのですが、来年度から概念設計を始めて行くと、2009年位に初飛行できるだろうと思います。もし、経済産業省のプランがうまく行けば、これと連合してシリーズ機として発展させることも出来るのではないかと考えています。

 海外を見てみると、A380(エアバス)、B7E7(ボーイング)、CRJ900(ボンバルディア)がそれぞれサービスに入ろうとしています。100席前後で見ると、ERJ190/195(エンブライアル)も近々サービスに入ります。もう一つ、非常に脅威に思えるのは、中国が現在、旅客機開発をスタートしております。約80席のARJ21で、100席よりは若干小さめですが、その辺りの市場を狙って、そろそろ2005年には初飛行するのではないかと言われています。更にロシアも100席前後の市場を狙って開発を進めています。このように、世界的にも非常に厳しい競争になりつつあります。従って我が国も、かなり急いで決定しなければいけないと思っています。

【近未来の空の交通】

 これから趣きを変えて、少し別の観点の話をしたいと思います。近未来の航空機の想像図です。800人程が乗れる総2階建ての航空機。エアータクシーという、電話を掛けて来てもらうタクシーのエアーバージョン。また、フェデックスという宅急便会社が使う予定のロボットの航空機配達便。これらはイマジナリーサイエンスと呼ばれていて、いつ実現するかは難しいところですが、少なくともエアータクシーについては、2020年には就航する方向で数年前から研究が進んでいます。この先、航空機は非常に大きな可能性を秘めている事がいえると思います。

 しかし、将来の予測というのは難しいもので、その例として、1939年のニューヨークタイムズの記事ですが、当時、テレビが出始めた頃で、テレビの問題は何かというと、人々はその前に座ってそれを凝視しなければならず、普通のアメリカ人はそんなに暇ではないからテレビをじっくり見ることは出来ないのではないか、と述べています。現在、世界で一番テレビを見ているのはアメリカ人だと思うのですが・・・。同じく、1977年に、DECという非常に大きなコンピューター会社の社長が「コンピューターは家には必要ない。持ちたいと思う人もいない」と述べていますが、現在、殆どの家庭にコンピューターがあるという状況になっています。ちなみに、DECはその後コンパックというパソコンメーカーに乗っ取られています。また、ビル・ゲイツでさえも1981年時点では、コンピューターのメモリは640キロバイトで充分であると言っていました。現在では、ノートパソコンでさえ、その100倍、1000倍位のメモリを持っています。このように、将来の予測は非常に難しいと言えます。

 ですから、先程の珍しい飛行機も、これからまだまだ伸びるのではないか、という気もしております。その一つの例として、最近アメリカで「新しい交通手段を作りましょう」という事で、小型飛行機の研究が盛んに行なわれています。1900年以前の交通手段は、馬車や船が主流でしたが、それが列車に変わり、自動車に変わって来ました。現在では長距離の移動には旅客機が一番重要になって来ております。今後は、旅客機も重要ですが、それとは別に、空のタクシー、あるいは自家用機が空のハイウエイを飛び交う時代が来るだろうと言われています。これを小型航空機運行システム(SATS)と呼んでいますが、その目的は、より容易に人々がいろいろな所へ移動する手段を提供するという事で、2001年〜5年の計画で、現在、研究が進んでいます。そのためには、小さなエアポートにも離着陸できるシステムも必要になって来ます。そして2010年頃には空のタクシー、2020年頃には自家用機が盛んになり、最終的には水素燃料による飛行機が2040年〜50年頃に実現するであろうと予測しています。

 また、10年以上前からアメリカで「ハイウエイ・イン・ザ・スカイ」といって、GPS等を使い、空にハイウエイのようなものを創る研究が行なわれています。それと同時に、コンピューターの進歩が著しいので、近々、自動操縦もかなり発達して来ると思いますし、コックピット上で道路のような表示をする事もできるようになり、我々が自動車免許を取るような形で20年頃には飛行機の免許も簡単に取れるような時代が来ると予測しています。そうなれば、非常に大きな国内マーケットがありますし、自動車メーカーの活躍する場もあるのです。実際に、アメリカのホルム博士の予測では、将来の航空機メーカーとしてトヨタやホンダが入っています。

【北海道への期待】

 できたら北海道に、「小型航空機運航に関する構造改革特区」を創り、空のハイウエイ網を北海道内に整備することができないかと考えています。現在、自家用機を持っている方々の不満として、なかなか自由に飛べないという事があります。それを出来るだけ自由にする。事前申請を無くすのは難しいかも知れませんが、直前に申請したら直ぐに飛べるような制度にする。アメリカではアトランタオリンピック時から、先程の「ハイウエイ・イン・ザ・スカイ」プロジェクトの研究を進めているのです。また、低価格な自家用機の基地を整備する、あるいはエアータクシー事業等を始める事により、将来の小型航空機による事業が大きく花開くのではないか、という気がしております。