CALS/ECとGIS利活用セミナー

「CALS/ECの現状」

伊庭  隆氏((財)日本建設情報総合センター 北海道地方センター長)

   

 ご紹介頂きました伊庭と申します。私どものところは、国土交通省が公共事業の情報化(電子化)、また、いろいろな事業をCALCECという形で進めておりますが、その推進あるいは普及をお伝えする活動をしています。今日は、「CALSECの現状」ということでお話をしたいと思います。内容としては、CALSの変化やCALSの必要性、あるいは現在取り組んでいます、いろいろな個別の施策についてお話したいと思います。

 

1. 公共事業をとりまく環境の変化

 昨今の、公共事業に対する国民の声を反映して、公共事業のいろいろな見直しが図られています。その一つとして「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」が20014月に施行されました。この法律におきましても、入札・契約のIT化の推進が位置付けられています。
 また、政府としての取り組みにおいても、
20011月に「e-Japan戦略」を発表し、3月には「e-Japan重点計画」が発表されています。また6月には「e-Japan重点計画−2002」というものを発表して、計画を前倒しして加速して行くという発表がなされています。国土交通省におきましても、事務次官を長とした「CALCEC推進本部」が設置され、「CALCECアクションプログラム」を策定しています。20026月の「e-Japan重点計画−2002」の中にも、「2003年度には国土交通省の直轄事業を問わず、全案件を対象に電子入札を行なう」ということで、計画の前倒しが図られることになりました。また、総務省とともに地方自治体の電子入札についても、システムの貸与や技術的支援ということで、地方展開されることになっています。

 CALCECとは、どういうことかと言いますと、「公共事業支援統合情報システム」の略称であり、従来は紙で交換されていた情報を電子化するとともに、インターネットを活用して、公共事業に関連する多くのデータベースを連携して使えるような環境を創出していく仕組みのことです。当然、一人一台のパソコンがインターネットにつながっている職務環境が前提になっています。

 なぜ、公共事業にそういうCALCECが重要なのか、ということで有効性について整理してみました。情報化の観点から見た公共事業には、大きく三つの特徴があると思います。一つは、関係者(発注者、設計者、施工者、資材供給者等)が多く、この間でいろいろな情報が頻繁に交換されるということ。二つ目は、交換される情報量が非常に多いということ。三つ目は、公共施設のライフサイクルが長く、情報を交換する期間が非常に長いということ。これらが情報化する上での必要な要件であると思います。

 2003年度に更新されました、国土交通省「CALCECアクションプログラム」では、2001年度から電子入札あるいは成果品の電子納品が開始され、2002年度にはフェーズ3に移行しており、2004年度には国土交通省の直轄事業全体でCALCECが完成する見込みになっています。更に2010年度を目指して、国内全ての公共発注機関にCALCECの取り組みを進めていくことが呼びかけられています。

 CALCEC実現のイメージとしては、公共事業の各段階で国民や発注者、受注者間での情報交換や共有が行なわれていくということです。

 先ほど申しましたように、CALCECというのは「公共事業支援統合情報システム」の略称ですが、公共事業における計画、調査、設計、入札、工事、その後の維持管理という各事業プロセス、あるいは関係者間での情報共有ができる仕組みであると思います。そこで現在、国土交通省で本格的な実施、あるいは実証実験として取り組まれている5つの項目についてお話していきたいと思います。

 

2. 電子入札

 まず、電子入札です。国土交通省では、直轄事業に電子入札が導入されたのは平成1310月からです。1113日には第1号の開札が扇前大臣の手によって行なわれました。

 従来の入札と電子入札の違いですが、従来の入札は人の移動コストや移動時間が膨大で、業者間同士が出会う機会が多いということから手続きの不透明さ、あるいは事業費の割高感というものが指摘されていました。電子入札になると、人の動きが電子に変わるということで、指摘されたような問題の解消が期待されています。

 国土交通省で行なわれている電子入札システムは、JACICが運営している「e-BISCセンター」で一元管理されています。「e-BISCセンター」では、入札希望者と国土交通省の間にインターネットを介しての通信回線を用いています。そして「e-BISCセンター」と国土交通省との間にも専用回線を使っています。また、電子入札を支えるシステムということで、インターネットの一つのサイトを利用して、発注情報や入札の広告、入札結果など誰でも検索できるような入札情報サービス(PPI)を提供しています。もう一つ、入札を行なった業者が本当に本人であるかを証明するための「電子認証システム」が、このシステムの中に入っています。

 「北海道開発局の電子入札導入計画」ですが、平成1410月から取り組み始め、平成14年度には約60件の電子入札を実施しました。その後、平成15年度には直轄事業の全面導入が決定されており、4月以降本格的に実施されているところですが、各事務所発注におきましては10月から開始ということで、今、それぞれ取り組まれているところです。

国土交通省では平成1310月にスタートしていますので、平成14年度には約2,000件の工事業務を電子入札で執行しています。そして平成15年度には全面導入ということで取り組まれています。平成15年度になって北海道も全国と足並みが揃ったということが言えるかと思います。

電子入札全面導入に当たりましては、そのために必要となるシステムの開発、あるいは電子環境整備、あるいは電子入札運用基準等も本年度中に図られます。特に、2003年から電子入札のコアシステムがバージョンアップされ、政府認証基盤、あるいは複数認証局に対応できるようなシステムの改良もなされています。

電子入札では、通信やアクセス相手である、人やサーバー、アプリケーションが本当に本人であるか、という正当性を証明することが必要となってきます。昨年度までは国土交通省の電子入札に対応する認証局は「帝国データバンク」一社でしたが、2003年度からは入札参加者が、電子入札システムに対応する複数の民間認証局から選ぶことが可能になりました。発注者においても、昨年は帝国データバンクが発行していた証明書を利用していましたが、現在では、国土交通省の認証局が発行している会員証証明書を利用して電子入札が実施されています。

次に、電子入札標準化促進のために現在使われている、「電子入札コアシステム」の話をします。「コアシステム」とは、国土交通省が作成していた「CALCEC地方展開アクションプログラム」の趣旨に則って、公共発注機関での円滑な電子入札システムの導入を支援するために「複数の公共発注機関に適応可能な汎用性の高い電子入札システム」です。コアシステムの開発目的は、大きくは「入札参加企業の混乱防止」と「システム開発費の縮減」です。電子入札システムが乱立すると、入札参加企業はそれぞれのシステムに対応することが必要になり、対応のための労力、コストの増大を招くことになります。コアシステムという統一システムを採用することで、入札参加企業の負担も大きく軽減されます。また、各公共発注機関が独自の電子入札システムを開発すると、その開発コストや維持管理費は膨大なものになります。コアシステムの採用により、システム開発の重複投資を回避することができます。コアシステムは、オープンGISの採用と仕様書の公告で独占が避けられ、自由な競争も可能となっています。これらにつきましては、ユーザーニーズの把握、あるいは汎用的な使用の検討、あるいは普及推進のための検討が必要であるということで、「電子入札コアシステム開発コンソーシアム」を設立して、開発・普及が行われています。

 

3. 入札情報サービス(PPI

 次に、入札情報サービスをご紹介したいと思います。これまで各地方建設局、あるいは工事事務所毎に、一部はインターネットや掲示、閲覧ということで公表しておりましたが、こうした情報を一箇所のホームページへアクセスすることにより、一元的に入手、検索することができるようにするサービスです。平成134月より国土交通省において開始されました。入札情報サービスによる情報公開の範囲としては、工事および業務等の発注の見通し、入札公告、入札結果が見られます。

検索画面で入札契約方式、公開日、発注機関等の条件をクリックしていくことによって、内容が表示されます。これら入札公告の全文も閲覧することができます。各社の入札額および落札結果も閲覧することができます。

 

4. 成果品の電子納品

 続いて、電子納品です。「調査、設計、工事などの各業務段階の最終成果品を電子データで納品する」ということで、既に開発局の中でも取り組まれています。電子納品の実施により、「省スペース・省資源化」「業務の効率化」「品質の向上」が図れると期待されています。

 電子納品の対象は、業務については全てが対象ということで2002年度から実施されています。工事については2002年度は2.5億円以上、2003年度は1億円以上と順次拡大してきており、2004年度には全ての工事が対象になります。

 電子納品関連の要領(案)・基準(案)につきましても、ホームページからダウンロードすることができます。

 次に、ガイドラインの具体的な内容です。改訂作業中ではありますが、●受発注者間の事前協議・事前指示事項の整理、●特記仕様書の記述例、●電子署名の当面の対応、●電子納品保管に関する運用ルール、●書類検査方法、●歩掛りの取り扱い、●共通仕様書の改訂等の方針があります。もう一つ、電子納品をする上での事前協議が必要になってきますが、事前協議ガイドライン(案)も一緒に示されています。これは、工事着手時に受発注者間が、どういう形のものを電子化して納品するか、ということを事前に定めておく必要がありますので、重要になってきます。協議項目としては、●電子納品の対象とする書類とファイル形式、●施工中の書類の取り扱い、●検査時の対応があります。つまり、検査時も紙でするのか、電子データでするのか、ということを予め決めておくことが大事だということです。この辺のガイドラインも、ホームページでダウンロードすることができます。

 そして、電子納品を進めていく上で、いろいろな図面関係も出てきますのでCADデータ交換標準も非常に重要になってきます。そこで、CADデータ標準化についての話をしたいと思います。なぜ、CADデータの標準化が必要か。その理由として、大きく三つあります。一つは、データ交換のための標準フォーマットがないと、異なったCADデータどうしでのデータ交換ができません。特に、日本の建設分野においては、様々なCADが使われていて、そのCADはそれぞれが独自のデータフォーマットを持っていますので、そのままでは他のCADデータとの交換ができない状況にありました。二番目は、交換できる標準フォーマットがないということで、今後本格的に電子納品になった場合に、現場での大きな混乱が予想されるということがあります。三番目は、WTO(国際貿易機関)の政府調達協定において、ISOなどの国際規格を使用することが求められて来ています。これはWTOTBT協定と言いまして、今後国際的に認められる交換形式でなければ、公共事業としての公平性に欠ける、といった指摘が予想されるということであります。これらの理由により、特定のCADソフトに依存しない標準フォーマットの策定が急務であったと言えます。

そこで、19993月に「CADデータ交換標準開発コンソーシアム(通称:SCADEC)」がスタートしております。このコンソーシアムには、JACICを事務局として37機関201社(建設業関係者、CADベンダーなど)が参加しています。20008月までの1年半に渡り、新しいCADの交換標準フォーマットを作るために活発な活動をして来ました。現在、公開されております「SXFレベル2」の仕様は、このコンソーシアムの中で開発されました。

 

5. 情報共有

 次に、情報共有についてお話します。公共事業にかかる工事、業務の施工途中において発生する情報を受注者、発注者が交換し利用していこうという仕組みです。情報共有の必要性としては、共有すべき情報が多種、膨大であり、関係者も多く、期間も長いということが言えます。従来の公共事業は、一般に紙を使って情報を共有していましたが、紙ベースの情報共有では関係者が費やす時間や費用が大きくなる、あるいは保管場所の確保や文書の不整合の発生といった問題も生じていました。

そこで、「CALSECにおける情報共有」ということで、公共事業に関する必要な情報を、関係者間および事業プロセスの間で、電子的に相互利用できるようにしようとしています。期待される効果としては、打合せ等の移動時間の短縮、文書管理の効率化、情報の一元管理による品質の向上などがあります。

情報共有システムは、インターネットに接続されていた情報共有サーバを共有して、受発注者間が情報を共有するシステムです。常に最新の情報が一元的に管理されているので、膨大な情報を個人で管理する必要がなくなってきます。そして、必要な情報へ簡単にたどり付くことができます。

情報共有システムの提供形態としては、サーバを発注者が管理する「発注者サーバ方式」と、第三者が管理している「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)」を利用する方法があります。一般的に「発注者サーバ方式」では、発注者の要望が反映されやすいということが言えます。「ASP」では、機器の調達や保守などの費用の負担が軽減できること。また、受発注者の双方が中立的な立場での運営が期待されるといった特徴があります。

情報共有システムの特徴的な機能としては、「決裁機能」と「電子納品支援機能」があります。「決裁機能」は、打合せ簿、あるいは段階確認など、システム上で作成し受発注した双方の関係者で受け渡しをするときに、承認、決裁行為が可能になるということです。インターネットで処理していきますので、現場が離れている工事について、距離や移動時間を気にすることなく手続きを進めることができます。「電子納品支援機能」は、日常業務で蓄積されたデータを利用して、簡単な操作で電子納品要領に則った形でのデータを作成することができ、この機能により、成果品の作成に関る労力も大幅に軽減されることが期待されています。

情報共有システム標準化の必要性ですが、現在、日本国内では公共事業もしくは建設業を対象に情報共有サービスが複数運用されています。これらのサービスは、業者独自の考え方に基づいて構築されており、提供サービス、画面、データ構造などが異なったシステムになっています。特に受注者は複数のASPを使うことも考えられますので、操作方法などを個別に覚える必要が出てくることから、今後、情報共有システムの利用が本格化することを考えると、利用者の混乱を招くことが予想されます。そこで、このような混乱を避けるために標準化が検討されています。例えば、ユーザインターフェースや機能が標準化されていれば、ユーザは操作取得の負担が軽減されますし、データ構造が統一されていれば、システム間の連携も容易に行なえるようになります。

国土交通省では、「工事情報共有データ検討ワーキング」を立ち上げ、標準化の活動を行なって来ました。 9月には、工事施工中における発注者間の情報共有システムの機能要件を公表しています。20033月には、公表した「CALSECアクションプログラム」の中で、情報共有標準仕様書も作成しています。2004年度には実証実験を行なった上で2005年度から本格的な全国運用を展開していく計画がされています。

 

6. 危機管理

 次に、危機管理についてお話します。公共施設の維持管理という段階におきましては、効率的な維持管理の必要、あるいは人命と財産を守る、という観点から非常に危機管理が重要になってきます。電子納品されたデータは、当面、電子納品保管管理システムによって管理されることになっています。将来的には共有統合データベースにより、GISをインターベースとして運営が行なわれることになります。このようなデータベースが実現化することにより、瞬時に目的のデータを入手することが可能になります。また、最新の状況、あるいは補修履歴、検索が容易になり、補修計画など日常業務全体での効率化が図られるということが言えると思います。このような電子データは日常の管理ばかりではなく、災害時等においても非常に有効です。将来的には、モバイル機器も利用して現場から状況データを送り込み、共有統合データベースの中に自動登録することで情報の共有が図られることになって来ると思います。それにより、より的確な情報伝達が図られ、大学、研究機関との連携も可能になって来ます。あるいは災害等のシミュレーションを行なう場合も、より的確な災害対策が行なわれることになると言えます。このような形で、現在、取り組みが行なわれております。

 

7. CALSECの地方展開

 次に、CALSECの地方展開についてお話します。地方展開の必要性として、導入が遅れると、コスト縮減効果が薄れ、紙と電子が並立することにより非効率になります。また、バラバラに導入すると、受注者が複数仕様に対応しなくてはならず、データの相互交換が不可能になって来ます。そのため、各公共団体が足並みを揃えた導入計画が必要になります。

 国土交通省におきましては、20016月、関係団体および各地方公共団体において、CALSECを実現するために、全国版のアクションプログラムを策定しています。地方整備局が中心となり、各地方毎にアクションプログラムを順次作っていく取り決めをしています。北海道におきましても、「CALSEC推進協議会」を組織して、アクションプログラムの策定を準備しています。また、国土交通省およびJACICSCOPEを始めとする公益法人が技術支援をしていくということで実施しています。

 国土交通省では、地方公共団体がCALSECを導入する支援の目安として、各都道府県、政令指定都市で2007年、主要地方都市では2008年という目標を設定しています。

 先ほど、CALSECを地方展開していく中で、国土交通省が支援するという話をしましたが、その具体的な支援内容として、●地方版CALSEC推進協議会の設置、●技術開発成果の無償・低価格での公表、●標準化に関するマニュアルの策定、公開、●実証実験フィールド実験への支援があります。

そして、JACICSCOPE等による支援としては、●電子入札コアシステムの開発・提供、●CALSEC資格制度、●都道府県建設技術センター等への技術支援、●教育・普及活動、●地方公共団体における整備基本構想等の策定支援を行っています。

 

8. 資格制度の創設

 CALSEC普及のために必要な人材を育成する必要がある、ということでCALSEC資格制度を創っています。平成136月に国土交通省から発表され、先ほどのアクションプログラム全国版の中にも趣旨が盛り込まれています。これに基づきJACICが創設した制度です。地方公共団体等への普及・推進の、指導的役割を担う人材の育成および情報伝達を目的としています。試験および登録に関しては、指定機関である社団法人建設コンサルタント協会が行なっています。

職務経験によって、二つの段階に分けています。一つは、CALSECインストラクター(RCI)です。役割としては、主に所属する職場における小規模(4050人程度)の研修やセミナーの講師を行なうというものです。二つ目は、CALSECエキスパート(RCE)です。これはインストラクターの役割に加え、導入において地方自治体等が実施する職員および受注者向けの大規模な説明会の講師、あるいは導入支援業務を担うものです。2001年度から認定を開始しています。今年度は930日に合格発表が行なわれました。年に一度の試験です。

 RCIおよびRCEの活用体系についてですが、独自で講習や教育ができない地方公共団体や中小の企業・団体等は、こうした資格登録者を活用することができます。国土交通省やJACICに集中しているCALSECに関する情報あるいは技術開発成果を、セミナーや講習を通して入手することができる仕組みです。こうしたことへの活躍が期待されている制度です。

 最後に、CALS関連HPを紹介しますので、何かの参考にして頂ければと思います。どうもありがとうございました。

 

 国土交通省            http://www.mlit.go.jp

 国土技術政策総合研究所      http://www.nilim.go.jp

 (財)日本建設情報総合センター  http://www.jacic.or.jp

 e-BISCセンター           http://www.e-bisc.go.jp

 入札情報サービス(建設)     http://www.ppi.go.jp

         (港湾、航空)  http://www.pas.ysk.nilim.go.jp

 日本土木工業協会         http://www.dokokyo.or.jp/ 

 建設コンサルタンツ協会      http://www.jcca.or.jp/

 オープンCADフォーマット評議会  http://www.jpsa.or.jp