
「CALS/ECにおけるGISの活用」
市川 伸氏((財)北海道建設技術センター 技術部長)
| JACICの伊庭センター長様から、「CALS/ECの現状」ということで詳しいお話しがありましたので、私の方からは、「CALS/ECを推進する上でGISが果たす役割」と「GISを導入するに当たっての課題」についてお話しさせて頂きたいと思います。
私は、現在、財団の技術部長をしておりますが、元々は道庁の職員で財団に派遣されておりますので、そういう意味では地方自治体の職員でもあります。北海道GIS・GPS普及推進研究会の会員でもありますので、皆さんと一緒にGISを発展させたいという立場で日々活動しておりまして、このCALS/ECが千載一遇のチャンスと思っている一人です。 先日、10号台風で災害が発生して、道路管理者と河川管理者の間の情報の連携不足が指摘されました。基本的に防災情報のネットワークが不備であった、という事もあるのですが、それ以上に問題だったのは、例えば土現ですと道路管理者のための道路が入った図面は持っている、河川管理者は河川が入った図面は持っている、しかし、両方入った図面で共有して管理をしていなかったという事がありまして、地図自体が不足だったのではないかという事があります。また、市町村の皆さんは、日々、防災の最前線で頑張って頂いているのですが、防災ハザードマップを作らなければいけない形になっているのですけれども、それにはお金が掛かるという事で、出来上がっていないという事があり、その不備も問題になりました。私も土現で仕事をしたこともありまして、今回のことについては大いに反省もしておりますし、元々私は主張してきたのですが、GISを中心として防災システムを作っていくべきだ、という思いを更に強くしているところです。 1.CALS/ECとGISの関係 公共事業の課題と対策 それでは本題に入りたいと思います。まずCALS/EC導入の背景を理解しておく事が大切なのですが、これにつきましては伊庭センター長様から詳しい説明がございましたので、補足する部分だけ説明させて頂きます。 今、公共事業のあり方の見直しが始まっています。そのためには、どのような目標を掲げて、どのような事をしなければならないかという事ですが、「建設マネジメント」という概念がこれから必要になってくるのではないか、と考えています。 最終目標は、国民サービスの向上やライフサイクル・コストの最小化ということですが、中間目標が結構大事だと思っていまして、その一つは業務の効率化(BPR)です。地方自治体の職員には馴染みのない言葉ですが、会社におられる皆さんには身近な話題だと思います。そういう業務の効率化を本気でやって行かなければダメだろうと考えています。もう一つは戦略の決定です。 手法としては、リスクマネジメントがあります。例えばリスクというのは、通常の仕事の中でもたくさんあります。なかなかコストを下げられないというのも一つのリスクですし、何かすると環境に影響を与えるとか、誰かが怒るということもリスクです。先日の出光のタンク火災についても情報を公開していなかったことにより、最終的に信頼を失うという事がありました。これもリスクなのですが、こういうものを一切合財同じ土壌の上に乗せて、その中で「これとこれはやろう」という最適回を出そうというのが本来のリスクマネジメントの考え方です。そういう概念を導入しなければ、今後の公共事業の見直しのあり方は出来ないのではないか、と言われています。そのためにも、データ管理は重要になりますので、情報化技術の活用がベースとして必要になって来ると思います。その一つがCALS/ECだという位置付けで考えています。 建設マネジメント構成要素としてのCALS/EC プロジェクトの計画段階、施行時期を経て維持管理段階、これが建設マネジメントで対象とする範囲です。CALS/ECの語源の中に、「ライフサイクルサポート」という言葉がありますが、その名前が示す通りCALS/ECというものも、プロジェクトのライフサイクルを管理していく技術であると考えています。 CALSのデータは、まず「共有統合データベース」に保管される予定になっています。そのデータは、最初から最後(計画段階から更新段階)まで順次受け渡されて、過去のデータも将来の人が見られるし、事業に関りのない別の場所にいる人も見られる、という情報の共有を図っていきます。その後は、行政が持っている既存の情報、技術システム(個人情報システム、財務会計システム等)をいろいろな市町村で作っていますが、そういうものと連携していき、その市町村の長の意思決定、マネジメントのために使っていこうと。そして、もっと成熟して来ると、将来的には企業や国民にサービスとして還元していくという事が考えられます。ここまでが、CALS/EC自体が建設マネジメントを行っていく上で必要だという話しです。 CALS/ECとGISの関係 しかし、CALS/ECは確かに必要ですが、それだけではプロは別として使いづらいのではないか、という部分があります。データというのは、入力する人も見る人も、使いやすい環境を提供して初めて進むのだろうと考えています。その意味でGISというツールが、ビジュアルに見られるという点で非常に有効であると思います。GISというのは、現在、あらゆる分野で利用され始めておりますが、CALS/ECへのGISの適用は、まだ殆どされていません。今後どのような形になるか考えてみました。 まず、地方自治体のGISといえば「統合型GIS」です。福祉や税、公物管理に至るまで広い業務をこれから行っていきます。そして、CALS/ECに関るGISという事で、仮に「業務型GIS」と表現してみましたが、これは行政が使っている範疇では、統合型GISと親子の関係にあることになります。具体的には、道路GISや河川GISがCALS/ECとくっ付くのだろうなと思っています。そしてCALSの中で出てきたデータがGISへ受け渡されて行くというイメージです。それから、もっと広い日本の社会経済全域を網羅したようなGISを、仮に「サービス型GIS」と表現していますが、環境・不動産・商業・観光等に使われていくものです。 これらのGISがお互いに連携して、情報を共有することによって相乗効果を生むだろう、というように考えると、CALS/ECのGISを中心に考えれば、行政側の統合型GISと連携を取らなければいけないというのは当たり前ですが、もう一つサービス型GISとの連携が必ず必要になって来ると思います。 例えば、国民生活や産業活動などに役立ってもらえるようなデータを提供する場合。先日の災害時でいうと、道路や河川の防災データがありますので、そういうものを逸早く社会に伝達するような仕組み、という視点がこれからは重要になって来るのではないかと思います。これまで公物管理の分野で業務型GISをやっている人達というのは、住民やマスコミとの接点が殆どないまま仕事をしています。しかし、これからCALS/ECというものが入って来ると、全く逆に、情報公開のための道具という形になって来ますので、私としても、そのような情報共有が進むことを期待しています。 2.CALS/ECにおけるGIS活用 CALS/ECの要素技術 それでは、まだ未知数の部分があるCALS/ECとGISの連携について、わかる範囲でお話ししたいと思います。 まず、CALS/ECの要素技術としてのGISについてです。プロジェクトは、調査→計画→設計→施行→維持管理→更新、そして更新計画が立つと、また調査→計画→設計→施行→維持管理→更新と繰り返して行きますが、この背景にあるのがCALS/ECの要素技術です。その中には、GIS、GPS、CAD、CGなどの概念があります。これらの要素は、今のままでは、ソフト側から見ると別々のものとしてしか認識できない状況になっています。そこで、これらの要素技術を一つの土俵で管理できないか、ということでJACICを始め国の方々がいろいろ検討されて、今回のCALS/EC導入の中では一部分だとは思いますが、テキスト文章、図面、写真等についてはXML言語を利用して標準仕様を作り、統合管理ができるようになっています。 「データベースを共有して管理できる」というのは、具体的に設計業務の成果品を例にとると、設計業務の場合は、まず報告書というものがメインになります。その中に能力の全てを注ぎ込むわけですが、それと派生して書いた図面が一つあり、現地測量などの写真があります。こういうものが、今までの概念では別々だったのです。CALSの中にはオリジナルのものも入れるのですが、報告書ホルダーの場合は、その他にPDFで統一しようという動きが一つあります。これさえも「写真などと上手くくっ付くか」というとそうでもない。 図面ホルダーはCADですが、これからはSXF形式で納品していきます。写真については、JPEGなどの圧縮状態で管理します。これらは全部別々のものですが、それぞれ管理情報としてXML言語で書き込むわけです。そうすると、中で共通で認識できますので、キーワードを入れて検索した場合、どこにどんな写真があるのか、報告書の何ページにある文章から引っ張って来たとか、どの図面とリンクしているとか、そういう事が可能になります。その将来形としては、納品したCADを自治体が元々持っている、または今後導入しようとしているGISで管理していこうという計画になっています。 CADとGISの融合 今後の課題ですが、まだ未成熟な部分がありまして、CADとGISが上手くリンクできない部分が残っています。一つは出発点(目的)が違ったので、それに伴って推進母体が違うということです。もちろん業務の対象部分も違います。CALS/ECの場合は、主に通産省、建設省、運輸省の事業型の皆さんが推進しています。GISは、国土地理院や自治省など、地方自治体の通常の仕事を所管したところから始まっています。出所が違うと、当然目的も違いますし、対象業務も違います。そして標準化方式も違っています。すると、データの簡単な変換ができなくなるというのが現状です。 標準化方式の違いを話すと長くなりますが、ざっとお話しすると、CADは皆さんご存知だと思いますが、市販されているソフトの中で巨大なソフトが一つあって、ディファクト・スタンダードという形になっていましたけれども、それではいけないという事でCALS/ECを推進するに当たってJACICの方でSXFフォーマットというものを開発しました。このSXFフォーマットの他に、世界的に見ればISOの動きがあって、ステップAP202シリーズなどがあります。 一方、GISはどうかと言いますと、DMフォーマット(国土地理院)、GXML(国土交通省)など日本独自の仕様、そして世界的にはオープンGISや、ISOではTC211など、いろいろな団体がいろいろな標準化、仕様化をしておりまして、一体どうなるのだろうかという状況でもあります。 こうした動きの中で、「一度原点に立ち戻って、仲良くして標準化しましょうよ」という流れもチラッと見えておりまして、その辺の標準化のための検討会をJACICが中に入って開催していると聞いております。 対策の決定打として皆さんおっしゃっているのが、CADでは、今後考えられているSXFレベル4(三次元CAD)です。ここまで行ってしまえばプロダクト管理ができます。要するに「これは建物ですよ」「ここにあるのは全部中の物ですよ」と、物としての管理ができるのでGISに馴染みやすい。そしてGIS側では、次の10年を狙った次世代GISというものが検討されています。これは大縮尺の地図を対象に整備して行こうということです。そこまで行きますと、精度100%のCADと、誤差のあるGISがうまく繋がって行くという話らしいです。これは概念であり、明確なものはまだ出て来ていないようなのですが、最終形はそこにあるだろうと思います。それに向かって、やれる事からやっていくという事です。 次に、GISとCADのデータが、CALS/ECの中で、どう使われることが多いかということです。まず、「調査・計画」「建設プロジェクト」「管理・更新」という3つの段階を考えました。「建設プロジェクト」は実際の施工段階で、応用測量→設計→施行の段階です。 地形測量の結果は、普通はDMフォーマットでGISデータとして作成されますが、これからはそういう事が多くなるだろうと思います。この内、一部はそのままダイレクトに維持管理に反映されることもあるでしょうし、応用測量、要するに工事に関る部分(路線測量や河川測量など)に引き渡される可能性もあるだろうと思います。 応用測量の成果品はCALS/ECの成果品となりますので、CADデータとして、次の設計の方に渡されます。更に設計段階で、いろいろな線を入れて工事図面として作るわけですが、これもCADのまま工事業者に渡されます。そして最後の竣工図までゼネコンの方がCADで作り、最終的に検査をして納品する事になります。 受けた側の行政側は、維持管理に使おうと考えると、更にワンステップ踏まなければなりません。GISに変換する、またはGISで使えるように治山諸情報を与えて、そのまま埋め込むこともできます。そのような手続きが行政側にも生じます。これで本来の統合型GISや、共有統合データベースの中でビジュアルに利活用できる形になります。 本来、構造物というのは、建築の世界ではCADで管理して来ましたが、土木でもそのようなやり方をしました。GISというのは、自然の地物を相手にしていましたので、現況図というイメージがあって、そういう歴史があります。しかしこれからは、「DMだから」「CADだから」というのではなく、仕事に応じて臨機応変に取り替えて行かなければならないと考えています。例えば、何か設計変更が出てきた時に、既存のGISから、「これ使えるよ」という事で一部を抜き出してCADにして、CADの中で作業して数量を出して、またGISに戻すとか、そういう臨機応変の作業をやらなければいけないのではないか、そういう技術がこれから必要になって来るのではないかと思います。 最後にまとめになりますが、まず改善すべき点は、「GIS側も歩み寄るべきだ」ということです。今の地方自治体のGISというのは、統合型には程遠い縦割りのGISになっています。それをまず解消して、受け皿を作っておくことが大切だろうと思います。後で大きな手戻りになってしまいますので…。それと先ほど言いましたように、GISとCADの間のデータ交換の標準を早急に作るべきだろうと思います。レベル4や次世代GISを待つまでもなく、暫定的にでも作るべきだろうと思います。三つ目は、CADから見れば「書いたけど、どこに入れれば良いの」という話になりますので、位置参照点というものを沢山つくるべきだと思います。電子基準点は増えていますが、そういうものをどんどん作って、GPSさえ持っていれば、CADで出来たデータが直ぐGISに取り込まれるようにするべきだろうと思います。以上で私の話を終わります。ご清聴有り難うございました。 |