
講師:山村 悦夫氏(北海道大学大学院教授)
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■GIS・GPSが次世代の産業基盤に
まず、政府のGIS・GPS等に対する認識が弱いと思います。もっと予算化し、対策を講じなければ日本の再生はないということを私は五、六年前から申し上げています。 高度成長期には、鉄が産業の基盤であり、様々な公共投資が行なわれました。それには大量の鉄が必要なことから、象徴的に鉄が産業の米であると言われておりました。 その後、コンピュータが大変発達し、コンピュータチップが産業の米であるといわれ、投資が盛んに行なわれました。そして、次の基盤産業となるのがGIS及びGPSです。また、インターネットを始めとする通信、この三つです。 経企庁の産業経済合同会議などで、今後の景気対策、財政対策として200程の案が出されておりましたが、その中に、このGIS・GPSという言葉が出てきておりません。それなのに、例えば電子政府をするとか、電子入札を行なうとか言っているのです。 しかし、電子入札をするときには図面が必要ですし、正確な地図も必要になります。また、電子地図、電子政府化も同様ではないでしょうか。やはり全国統一された500分の1程度で相当の精度の電子地図が必要なのです。全国統一されなければ電子政府化や電子入札は到底不可能です。 ■アメリカでの取り組みが参考に 例えばアメリカでは、十数年前に、S&Lという貯蓄貸付組合が全国至るところで倒産状態になった。今日本で起こっているようなことが起こっていたわけです。アメリカ政府は、その当時情報ハイウエイ構想で、膨大な光ファイバー網を全国的に整備したのですが、それは、このGIS・GPSを流そうということであれだけの投資を行なっていたわけです。 GPSは元々、アメリカの軍事技術で、それを民間に転用したのですが、一番大切なのは、行政改革は痛みを伴うということです。今まで公共投資していた建設関係等への予算が減少すれば、当然、失業者が増加します。ですから、そういう失業者の受け皿となる産業をつくらなければならない。アメリカではその産業として、このGIS・GPS産業を育成して、失業者が出た場合の受け皿にしようと考えたわけです。ですから、アメリカのGIS・GPSの会社には元建設会社の方がたくさんいます。そういう方たちを積極的に新規産業に引き入れるということが大切です。これを政策アセスメントといいます。日本も環境アセスメントと同じように、政策アセスメントをしなければならないのです。アメリカでは従来の建設公共投資を削減しました。そうすると大量に失業者が出ますので、それに替わる新しい産業をつくらなければならないわけです。アメリカでは、それを明確にして政策アセスメントとして新規産業に吸収させていったわけです。 このような整備をするために、多分アメリカは国の存亡を賭けてこれにお金を投入したと思います。その結果が、現在の黒字につながったのです。そういう例があるわけです。さらに重要なのは、民間にシステムを導入させなければならないことです。ですから、銀行関係に全部導入させ、それを監督できるようにしたのです。GISを導入していれば世界中でどんなことが起こっているかというのを把握できるので、その状態を把握し、早急に対応できる。大火事にならない前に消してしまうということです。 ■電子地図、データベースの双方の整備が必要 何か電子地図をつくるというのがGISであるとお考えの方がおりますが、それはGISでなくて地図情報システムです。詳細な地図をつくり、それから電子地図をつくるということも重要ですが、それに対応したデータベースが整備されていないと駄目なのです。地図でアクセスした地域の状態がどうなっているか、膨大なデータが、アメリカの場合は出てきます。アクセスしてみますと、所得、学歴、階層、人種等のデータが出てきます。ここはメキシコ人が多いとか、白人が多いとか、黒人の方が多いとか、そういうことが解るほどデータが地図と一体化しているのです。ですから、GISというのは電子地図化するだけではなくて、このデータベースと一体となって、初めてその力を発揮できるのです。 GISを普及させるためには、やはり空間データの基盤整備が必要です。そこで、市町村における導入について私たちの研究会でも大変力を入れております。そのとき、地図になる地籍図があるかないかが大変重要です。現在、2,500分の1の地図を全国的に集めさせて作らせておりますが、まだ全国統一された詳細な地図はなく、早急に進める必要があります。2,500分の1を基本にして、地籍図があれば、それにデータを重ね合わせることによって、すぐ市町村で導入できるのです。地籍が電子化されていれば、更に早く導入が可能です。北海道全体としては、もう8割近く終わっております。全国に比べると大変進んでいるわけです。 それから、電子地図化についても、最近はいくつかの省庁の補助があります。そういうことから、全庁型の統合されたGISが、石狩市で導入されました。これは全国で最初だそうです。 ■各ユーザーの能力に合ったエンジンを 実は北海道は、特に札幌ですが、ソフト関係の新しいエンジンの開発に関しては、全国一の企業が揃っているのです。私たちの研究会では、そういうメンバーが入っておりますから独自のエンジンをつくってもらい、その市町村のユーザーに合ったものを提供することができます。私たちは、そのユーザーの能力に合ったエンジンと、地図を提供しております。 ここで一番大切なのは、そのユーザーが自分自身で利用できるということなのです。余り多くの機能を入れ過ぎると利用できないのです。初期に導入した全国の市町村の中には、ほとんど使われてないところがありますが、どんな職員の方でも自分で利用できるようにするのが一番です。 また、市町村に導入するためには、やはり国土地理院の基準点に沿った正確な地図を整備する必要がありますが、民間における利用の推進にあたっては、地図の精度は余り問題ではないでしょう。場合によっては正確な地図が必要な業界もあろうかと思いますが、そうでもないところがほとんどです。 最近は、GIS・GPS機能をもった製品が色々開発されておりますが、経営においては、全国どこへ行っても地図がダウンロードできる位の機能で十分なのではないでしょうか。実際には、この種の様々なモバイル製品が開発され、ナビゲーション機能による道順の決定、インターネットによる目的地・交通機関の検索など、経営に役立つ様々な情報を得ることが可能になりつつあります。 日本は確かにGIS・GPSに対して、国としての取組みが大変遅いのですが、こういう物づくりに関しては大変な能力を持っております。これらの製品を、どのようにして経営に活用するのかが、これからの経営戦略の基本になっていくのではないかと思います。 アメリカの企業の方が指摘するのは、日本の企業にはGIS部門というのがないということです。アメリカでは必ずGIS部門があり、インターネットでアクセスすれば、その会社の様子がよくわかるとか、そういう状況だそうです。日本の場合は、GIS部門を持っている企業というのは多くないということですが、得られたデータを電送してPCで読めるようなものが設置されていれば十分だろうと思います。 また、ホームページか何かでそれを海外はじめ色々な所にアクセスできればいいわけでありまして、そういうことで私たちも研究会を設立して、経営の方にも大いに利用していただきたいということをお話しているわけであります。 ■北海道を全国のモデルに 様々なところから問い合わせがありますが、現在はやはり、介護保険に関して市町村は一番頭を悩ませているようです。介護保険制度がスタートしますと、自治体も企業のような完全競争の時代に突入しますので、市町村の存亡に関わります。なぜなら、こちらの市町村はサービスがよくて値段が安いという話になると、住民はそちらに移動する可能性があるからです。そういう時代です。 現在、三大都市圏に住んでいる団塊の世代が約2,000万人おります。その方たちが年金をもらう時期になると、年金が今の3分の1ぐらいになるわけです。3分の1になって、社宅から出て20万円や25万円のマンションに住んで生活できるかというと、できないわけであります。ですから団塊の人たちは、介護制度の整った市町村を一生懸命に探して、あそこの市町村がいいとか、ここの市町村がいいとか考えるわけであります。ですから、介護というのは首長さんの腕の能力が問われるということなのです。まさに市町村の存亡に関わるのです。 また、モバイルをホームヘルパーさんに持たせたり、介護関係の方に持たせて、デジタルカメラで患者の様子を写真に撮って電送し、お医者さんが見て指示を出したり、電話で指示したりメールで送ってやったりと、様々なことに使えるということで、市町村、民間の介護の会社が導入を検討しているところであります。 そういうことで、これだけの機能がついていれば、経営者の使い方によって会社の成否が決まってしまうのではないかと思います。私たちの方でも首長さんにこれをお見せしますが、反応は上々です。しかし、すぐに全庁的なGISを導入するのは難しい。というのは、縦割り行政になっており、それも国の縦割り行政から端を発していますから難しい。しかし、介護については、首長さんの判断でどうにでもできることですから、介護関係のGISは導入可能です。例えば、介護スタッフの現在位置を把握し、指示を出すといったことができます。 最後に申し上げたいのは、全国的にみてもこれだけ地籍が整っているというのは、この北海道しかないということです。他の都道府県の方から聞くと、本州は都府県に分かれていますので、特に県境の市町村のGIS導入が大変難しいということです。北海道はそのような問題もありませんので、現在、北海道を全国のモデルにしようということで研究会の活動を行なっております。 |