96・11・21 創立5周年記念シンポジウム「21世紀、北海道のグランドデザイン」
―経営戦略の大転換と産業クラスターの創造―

 去る11月21日当フォーラム創立5周年を記念して、「21世紀、北海道のグランドデザイン」と題するシンポジウムが開催されました。後程、報告書に詳細な講演内容を掲載する事にしまして、ここでは基調講演の北海道経済連合会会長の戸田一夫氏の内容を要約して掲載します。

基調講演 「北海道の産業政策」北海道経済連合会会長 戸田一夫

1)課題の整理


 北海道の現状をどう見るか一口で言うと、北海道は日本全体から見ました時に、存在の役割を終えた地域であると言わざるを得ません。明治以降の日本の近代化、戦後の復興において北海道の持っていた天然資源は、かなり大きな役割を果たしたのです。しかし現在域際収支3兆円の赤字を毎年抱え、北海道はお荷物に成ってきているのです。しかしながら、国の財政支援は高齢化社会を迎えるに至って決して期待できるものではありません。今なお国債の発行残高が240兆円という膨大な借金が存在する中で、北海道としても、これ以上、中央の公共投資に依存した産業体質を続けていくことはできません。さて、問題点の根源はどこにあるのでしょうか。それは北海道は、官庁のみでなく一般企業においても中央で意思決定されて、地域にノウハウや知識が残らず中央へ戻ってしまうのです。戦後50年日本はこのような分業システムによって発展してきたのですが、これからは、自立という事に向けて意思決定機構を地方に持って来なくてはなりません。世界市場の中では天然資源の競争力は失われ、むしろ、それをどう使うかという頭脳産業に重点をおいた産業構造に転換しないとその地域は生き残れないのです。

2)フィンランドの産業政策

 私は、一昨年、昨年、今年と3回北欧に行ってきました。その中で、フィンランドは人口が500万人と本道と同程度ですが、非常に厳しい環境から立ち上がって、現在ある意味では北海道以上の経済発展を実現したのです。技術後進国であったこの国が一番力を入れたのが、プロデューサーとユーザーのリンケージという事でした。これを非常に緻密な形で作り上げたのです。クラスターというのは、このリンケージをしっかり作り上げた中で育っていくものなのです。種があって、その種をしっかり見定める、そしてそれを直す、木を育てるわけです。そしてその育てたものが更に根になって、一つ一つの葡萄の房が生まれてくる。これがクラスターの形成なのです。フィンランドの研究費用の推移をみますと、1962年では、GNP当たり0.39%、68年には0.49%、1980年代に入って1%位、昨年は1.7%まで増やしてきたという経過を辿ってきています。北海道の研究費用は、官・民トータルで、北海道のGDPの0.14%です。これが如何に少ないか。このままでは、北海道の将来は生まれてきません。フィンランドは国際化の中で生き残るために、研究開発しかないと言っています。情報技術の発展と世界市場の変化を受けて、生産の専業化が行われています。これに関しては世界最先端というものを作らなければならないのです。役所は企業が発展していく邪魔にならないように努力すべきだとも言っています。

3)デンマーク農業と北海道農業

 北海道の場合ある程度の産業基盤をもっているものというと農業ということになります。デンマークは農業の国ですから、食品クラスターと言っていましたが、我々の北海道で、農業クラスターあるいは食品クラスターを展開する上で参考になることを学んでまいりました。1788年位にデンマークでは宮廷革命がありました。Reventlowという人は、貴族でしたが、非常に開明的な人で、農地解放の糸口をつけ、農家の子弟の教育を始めたのです。しかし、その農地は農民が自分で働いて稼いだ金で買っているのです。デンマークでは、農業学校を卒業して国家試験に当たる試験を受けて、ライセンスを貰うと30ヘクタール以上の農地を買って農場経営をすることができる。それを国はサポートしているという形になっていました。そういう形の中で農家が生涯学び続けなければならないというふうに躾られているのです。ただしお金を払って学ぶ、ただで情報は与えないのです。このアドバイザリーセンターでは、「デンマーク農業が今日世界のトップレベルにあるのは、農家の皆さんが学ぶ事、力を合わせる事、そして地域のことを考える事、この3つをしっかりやっているからだ」と言われました。

4)産業クラスター創造への道筋

 こうした北欧諸国の産業政策をそのまま真似るということではありませんが、ユーザー・プロデューサー・リンケージをしっかり作る事が、北海道のこれからの産業を作る一番基本になると思います。つまり、産業の芽になる部分を育てる知的集積(知識及びノウハウ)を道内で、どのような形で作っていくかを考えなくてはなりません。人材を育てて産業化システムを作る。基幹産業の選定と種蒔きへの全員参加。道民一人一人が、ネットワークを作りながら世界に誇れる北海道として飛躍していこうではありませんか。


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