第5回 北海道起業化・新事業創造育成ゼミ
テーマ:「ビジネスプランの作成と事業の立ち上げ」
川村 志厚(経営デザイン研究所 代表)

一、ビジネス環境の変化とアントレプレナーシップ

1・世界のビジネス環境
なぜ今、ビジネスプランなのか。ビジネスプランというのは、新たに自分で会社を起こすというだけではなく、日本の中では、現在属している企業の中で、新規事業の創造をするというのが7割位になります。なぜそうなのかと言うと、一つには、世界的なビジネス環境の変化、1)グローバルスタンダード 2)新産業革命 3)民族・人口・地球環境と3つ上げています。グローバルスタンダードというのは、耳にタコができるくらい今年の流行語であります。しかし、これは非常に誤解がありまして、新聞の殆どが「商品、サービスを含めての標準」ということで、その最たるものがISO9000シリーズや1400シリーズであったり、アップル社を吸収したコンピュータの戦略ということで書かれますが、本当のところは違うと思います。私は、長いヨーロッパ生活を通じて特に確信していることですが、これは新たな世界の普遍性を表わす言葉であって、要は価値の基準なのです。価値の基準をどこに持つかというのが、グローバルなスタンダードということでして、今、基本的にはアングロサクソンの価値基準がビジネス環境になっているということを理解しておかないと、いろいろな面で不十分になると思います。理由は、一番わかりやすいのは、コンピューターとコンピューター・ネットワークの世界です。コンピューターは御承知のように、デジタルを信号に変換するのですが、その変換の構造が英語の構造なのです。ですから、英語を基本にして今のビジネスの普遍性が築かれているというのは大前提です。言葉は思考を、思考は行動を規定しますから、逆に言いますと、どの言語を使うかによって思考方法も行動方法も変わります。これは私自身の体験としても、例えば数ヶ国語を勉強して、それで考えるということをしますと、考え方なり行動が影響を受けます。それで、普遍性ということですが、現在の普遍性というのは今申し上げたようにアングロサクソンなのですが、この特殊性あるいは個別性というのは大変普遍性があるわけです。世界に起きているナショナリズムというのも、19世紀におけるナショナリズムと全く意味が違っておりまして、普遍性を受入れざるを得ない特殊性、つまり日本文化もアングロサクソン文化の普遍性を受け入れた上で、日本の特殊性を何とかということが環境です。 それから、新産業革命の中心は情報革命ですが、基本的に一言で言えば、時空観念が変容したということが本質です。つまり、時間・空間の観念が情報によって同時性を持たらすようになってきました。そこで価値も変わってくるわけです。内容的にビジネスの上では、アナログからデジタルに変わるし、リアルからバーチャルへ、マスからパーソナルへと環境が変化しています。 3つ目は人間の本性に関わる問題です。世界的には人口の増大や民族の紛争、地球環境の悪化ということも考えなければならないということですが、時間の関係で省きます。

2・日本のビジネス環境
こういう世界のビジネス環境の変化の基にある日本というのは、産業構造上は、製造業・サービス業・人材を含めて空洞化します。空洞化するのは悪いことではないと私は思います。基本的に、メガコンペティションというのは世界がマーケットですから、良い方に流れるのは当たり前です。社会構造上においては、欧米化と過疎・過密の問題があります。それから、精神構造も重要な問題です。社会も空洞化し、産業も空洞化し、精神の空洞化も始まっていると私は認識しております。ここで何故こういうことを言うかというと、これは全部ビジネスチャンスなのです。精神の空洞化というのは、基本的に「孤」の時代に入っていて、国家観念が希薄になっているのも、この反映であるわけです。これは非常に重要で、なぜ「孤」の時代になったかと言うと、日本は集団の社会であったわけですが、これの崩壊が「孤」の時代を招いているのです。では、先程のアングロサクソン文化の方はどうなっているかというと、「個」なのです。これは、普遍とか全体(宗教的な意味も含めて)あっての「個」なのです。ですから、今、日本の文化と世界の普遍になっているアングロサクソン文化との違いはここにもあるということです。以上のことが押さえておかなければならないポイントです。

3・アントレプレナーシップの再生
こういう時代だから、アントレプレナーということが言われているわけですが、基本的に日本では「孤」の時代に対応してアントレプレナーが出てきているのです。ですから、本当の意味のアントレプレナーではないのです。「個」のアントレプレナーとは違います。一人になってみて初めて、人生の意味や役割や目的を誰もが考えざるを得ないようになりつつあるという時代の変化から、アントレプレナーが出てきています。ですから、人生の意味や目的を具体化するというのがアントレプレナーです。今の時代は、明治5年から20年ぐらいの状況に非常に似ていると私は思います。皆が自由に事業を起こして良い時代だと考えています。

二、ビジネスプランと事業化

1・ビジネスプラン作成の目的
まず、作成の目的で一番大事なのは、御自身のアイデアを論理化し明確化するということです。アイデアだけでは何ともなりません。構想というのは、もう少し進んだコンセプトで、それを文章にしてみて数字を詰めていくという明確化をしない限り、ビジネスは立ち上げられないというのが実態です。それから次に、自社あるいは自らと、他社である取引先や従業員や協力者を説得できるようにするためです(社会的意義・役割の説得)。そして、経営者としての原点、あるいは責任者として原点を確認し続けるという意味で、経営のツールにもなります。いろいろな要素がありますが、突き詰めれば、この3つをビジネスプランできっちり仕上げなければいけません。

2・ビジネスプランの構成
(1) 経営の要約

 経営の要約とマーケティングと財務が経営の柱です。経営の要約とは、何を誰にどのようにして、何のためにやるのかということです。その中身は、1)経営の理念。これは、方向性を現すもので、非常に重要です。理念なき経営が、いかに危ういかということは例を上げるまでもありません。自分が提供する製品・商品・サービスをもって、何を実現したいのかを書いたものが経営理念です。ですから、どこかの本屋さんで売っているものを買って来て、我社の経営理念を作っても何にもなりません。この経営理念を日本で最初に作ったのがNECです。NECが成功してから、日本の代表する会社では、ほぼこのスタイルを採るようになりました。NECでは、前の会長さんが取り入れたのですが、まだコンピューター化する前の低迷していた時期に、我社は今後どうしたら良いかということを真剣に考えられ、この時に決めた縦軸と横軸があります。一つは、我社が扱う商品はコンピューターが良い。我社が実現するものはコミュニケーションであると。今でもNECでは、C&C(コンピューター&コミュニケーション)と言っています。その上で、商品開発を行っています。事業を起こすには、この経営理念をとことん考える必要があります。経営理念とは経営者のビジョンです。ビジョンですから、曖昧なことをしても駄目です。目に見えるような形にしなければなりません。2)新規事業の概要。これは、独自性と新規性がどこにあるかを現します。人の真似ではないということです。3)経営のシステム。これは、この事業の実現性がどのくらいあるかを現すものです。この中には、組織・人事・情報システム・製造・仕入れ・供給のシステムをどうするか、あるいは研究開発システムをどうするかといったことがあります。
(2) マーケティング戦略
マーケティングは市場性を見るものです。
@ 4P
まず、製品・商品・サービスのProduct。このポイントは、物理的な特性が目に見えるように書くことです。つまり、私のサービスの内容を、具体的に使ってくれる人が目に浮かばなければなりません。次に、Price。価格をどうするかということで、商品戦略です。次に、Place−場所。最後に、Promotion−販促。この4つのPが必要です。
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まず、Customer−顧客です。これは非常に重要で、誰が買いに来てくれるのか具体的にわからないようでは失格です。次に、マーケティングにかかりますけれど、顧客が一体どのくらいいるのか。これは難しい調査をしなくても、すぐわかるのです。事業をやろうとする方は、基本的な数字は全部頭に叩き込んでおいて、あるアイデアが思いついたりした時には、即座に、だいたいのマーケットを計算できなければいけません。この基本的な数字というのは、例えば日本のGDPであったり、人口・世帯数、単身者が何人で女性が何人で全体で何人かということです。それから、平均所得などということが頭に入っていなければいけません。次に、Competitor−競争相手です。競争相手の分析をやるということも必要です。3番目に、Corecompetence−競争力です。このマーケティングにおける競争力はなにかということです。
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これは、マーケットのShareです。なぜそういう数字がわかっていなければならないかと言うと、自分のシェアはいくらかという見込みをつけなければいけないからです。シェアの見込みがつかないで、アイデア段階で止まっていたらそれは本物ではありません。もう一つのSは、Storyです。意外に思われるかもしれませんが、今のマーケティングには絶対に必要です。ただ良いものを作れば売れるというだけではなく、ストーリーがあってはじめて売れるのです。例えば、ブランド品というのは全部ストーリーがあるのです。ストーリーを全部自分で作って流していくというのが、マーケティングの基本であります。
(3) 財務戦略
これは実現性を見ることと、将来性を見ることです。どんどんお金が必要になりますから、キャッシュフローをまず、最重点で設立しなければなりません。そして、できるだけ公的なお金を使った方が今は良いです。なぜなら、少なくとも今後2年間は、銀行は様々なしがらみがあって、新規の貸出しはしないということがあるからです。それから、貸借対照表と損益計算書については、3年先を見たものを作っていきます。何のために作るかというと、3年先にまだ商売をやっていますというだけでは駄目なのです。ポイントは、3年先に自己資本がどのくらい充実して増えていくかということなのです。これをやらないと作った意味がありません。

3・事業化の実際
(1)思考習慣・行動習慣を変える

まず、事業を実際にやっていくには、ものの考え方と行動の習慣を変えなければいけません。どう変えるかですが、仮説→実行→検証の連鎖をするのです。まず、新規事業は仮説なのです。何本の仮説を立てられるかが勝負です。少なくとも最低3とおりの仮説を考えるのが望ましい。プランと仮説は違います。仮説というのは、WHYです。これを突き詰めて自ら考えるというのがアントレプレナーの最も必要なものです。次にプレゼンテーションです。いくら素晴らしい事業計画書を作っても、説明できなければいけません。ここでつまづく人が多いのですが、基本は自分と相手を知ることです。
(2) 成功の基盤づくり
次に、成功するためには、縁とお金と仕事をつくらなければいけません。縁は、あくまでも私と相手との一対一の関係です。自分が相手にどのくらいメリットを与えられるかがポイントです。自分のメリットはわかっているのです。ところが相手に対して、私はどんなメリットのある人間なのかを十分に考えなければいけません。例えば、歳を取ってくると感性にだんだん自信がなくなってくるのです。若い人と話していると、生き血を吸っているような気になってきます。そういうことがメリットなのです。ですから、何もメリットというのは相手を凌駕することではなくて、絶対自分はメリットを持っている人間だと思って下さい。次にお金ですが、無ければお借りしなければいけません。これは、堂々と借りるのです。但し、経営者というのは一円を惜しまなければいけません。一円というのは、原価で一円を惜しむということです。それがどのくらい利益になって跳ね返ってくるかわかりますか。次に、仕事をつくるということは、お客さんのニーズをどこまで把握できるか、どこまで自分がお客さんのことを考えられるかによって決まります。環境の激変というのは、ニーズの固まりです。そこで、自分にしか見えないコンセプトを見つけ、誰よりも自分がそのニーズに、より多く応えられるということが必要です。そして、経営者は人間として立派かどうかというのが非常に重要です。他人の苦労や痛みがわかるというのは経営者の資質です。そして、誠意を持つ。嘘を言ってはいけないし、約束は守らなければいけません。あとは、何でもポジティブに考えることです。
(3) 実例
最後に、どういう会社が具体的に起ちあがったかというと、環境・情報・サービス関係が今は一番多いです。環境関係で言いますと、松島湾は牡蠣の産地ですが、問題は牡蠣の殻でした。これを素材として使うというプランを立てて成功している会社があります。要するに殻を粉にして、一番小さくすると医薬品になるのです。少し大きくすると健康食品になります。もう少し大きくして固めると歩道の敷石にちょうど良いのです。どの場合でも技術の検証は非常に重要です。自分だけでやっているうちは駄目で、どこかと提携した方が早くできます。サービス関係でいうと、葬式に使う花を従来の花ではなく、色とりどりの花を使って祭壇を作るというアイデアを出して、「花祭壇」という会社を創ったのですが、この不況下に資本金が4ヶ月で1億2千万円集まりました。それから、名刺に自分だけのマークを入れるフランチャイズのお店等いろいろあります。


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