テーマ:『開かれた大学への改革と産学官交流拠点の展開』
―小樽商科大学の挑戦―
講師:山田 家正氏(小樽商科大学学長)

はじめに
 ご紹介頂きました小樽商大の山田でございます。大学も最近ずいぶん変わってまいりましたので、その状況をまず知ってもらうということと、私どもの大学の動きを少しご紹介したいと思います。私はもともと生物学で、しかも海草学ということで海に潜ってばかりいたのですが、いつの間にか大学の問題そのものに関わるようになりました。特に学長になってからの5年間は、このことばかり考えて暮らしてまいりました。国立大学の問題は大変難しい時期に入ってきております。今日も日経新聞に『国立大学に市場原理を』ということで、記事が載っておりました。競争原理を導入して民営化を図れという趣旨で書かれております。国立大学だけではなく、日本の教育の仕組というのがかなり変わってきたことは確かですが、多様化とか個性化という一方で、ワンパターン化の道をどうしても歩まざるをえないジレンマがあります。日本では本当の意味での多様化とか個性化が育たない。農耕民族の特徴という言い方はあるかも知れませんが、それにしても横並び志向がかなり強いと考えておりまして、ここの部分をどう変えていくかが、これからの日本に厳しく問われなければいけないだろうと思われます。そういうことで、これからの大学の在り方を民営化も含めて、そういうものに対応できる力を持っていかなければいけないと感じております。
 最近、英国でクローン羊ができ、アメリカでも霊長類のクローン猿がつくられました。それからいろいろ連想して、今の大学の在り方もクローン化してきているのではないか、ワンパターンな生き方をせざるをえないということが言えるのではないかと感じております。結局この背後にあるのは、多様性と均一性という問題だろうと思います。生物の進化の過程を考えていくと、生物は、遊んでいる遺伝子を遺伝子グループの中にたくさん抱え込んでいます。何の役割を果たしているのかわからない遺伝子が、ある種のバッファーとして働いているというのは確かだろうと思います。つまり、最小必要限度の遺伝子だけでは環境の変化に耐えられない。環境の変化が来た時に、それが弾力的に動ける仕組を生物は備えている。一見遊んでいるように見える遺伝子が、実は非常に重要な役割をしているのです。それから考えて、トヨタの部品工場の火災があった時に生産ラインがストップしたというのを見ても、最小必要なギリギリのところにトラブルがあると、全体のシステムがおかしくなる。ですから均一性、多様性のところで、トラブルを防ぐシステムをどう創っていくかということも考えていかなければいけません。結局は、いろいろな考え方をシステムの中に持ち込んで、ミックスした形で多様性を図っていくということを考えていかないと、言葉だけの多様性では意味がない。基本が多様化していなければいけないということをクローン羊から連想し考えてみました。企業の経営者でも先を読む力のある方は、いろんなタイプの人を集める努力をされております。ワンパターンですと、先程の遺伝子でお話したバッファーのない硬直した考え方だけで動き、破局が来ると一気にダメになるということで、採用の在り方もそういう発想を持っていかないといけないわけで、どこそこ大学だからということでは、企業が成り立たないということは自明の理であります。本学の卒業生も、そういう意味では厳しい試練に遭わなければいけない、それを避けては通れないということを言い続けているわけですが、学生の方はさっぱりわかっていない。そういうジレンマを抱え込んでいます。

1・国立大学、小樽商大の現状
 国立大学の現状というのは、大変大きな問題が課せられております。昨年11月の国立大学協会の総会の席上、初めて国立大学の民営化にどう対処するかという議論がなされました。今、財政審議会で進められている議論というのは、「なぜ国民の税金で国立大学98校を賄わなければいけないのか、その理由は何なのか」ということで、それにどう反論するかということであります。結局、今のところは有効な反論するすべがないという状況であります。それは、いろんな言い方があります。私どものように現場におりますと、学長として、民営化したときに大学がどういう形で存続できるのかを考えなければいけません。その猶予期間がどのくらいあるのか。もし法人化された場合には、どういうストラテジーで大学を経営していくのか。その見通しが全く立たないという状況では、うかつに民営化賛成とは言えない。もう一つ重要な問題は、民営化に踏み切った場合に、国立大学で行っている科学技術、その他多方面にわたる研究能力が一時的にせよダウンする可能性がある。遅れが許されない技術開発等に、どういう影響がでてくるか。そのことも充分考えなければいけないし、国家百年の計を考えた時に、ただ競争原理だけで国立大学を切り捨てて、それで本当に日本の将来に良い結果をもたらすかどうかも議論しなければいけないと思います。
 そのような考えで、国立大学の問題を捉えているわけですが、私個人の感覚では、恐らく民営化は避けられないだろうと考えています。それは時期の問題であり、その兆しは3年以内遅くても5年以内に、何らかの形でのアクションが出てくるだろうと考えています。それは行政改革の流れの中での議論ということになりますので、段階的に進んでいく道が考えられますが、国立大学の学長が集まると、大規模な大学(東大、京大等)は、「多分、自分のところは民営化にならないだろう」という表現をします。真っ先に切られるのは、社会科学系の大学や文系、教育系の大学かも知れない。そういう感じを持っています。一番深刻なのは、地方の複数学部を抱えた中規模大学の学長さんであります。もし財政的援助が受けられない場合、民営化と言ってもお金がかかる学部を抱えていると、とても対応しきれないからです。小さい大学の場合は、どうにか生き残る道があると考える方が比較的多い。私は東大、京大は民営化されても必ず残るから、逆に民営化されるかも知れないと考えています。つまりお金を大に食うところを民営化しなければ、少なくとも財政的には改革する対象にはならない。実際に私どもの大学の年間予算は、人件費を含めて25〜27億くらいです。その内人件費が8割くらいかかります。授業料収入は11億くらいですが、これは現在、大蔵省に入っていく仕組です。北大は年間約1千億くらいはかかるだろうと思います。ですから財政的な面からだけ言えば、そういう大規模大学をメインにしなければ意味がない。小規模大学を削っても意味がないということですから、各大学の学長は疑心暗鬼で、どう考えたら良いのかわからないというのが正直なところだと思います。

(1) 開かれた大学とは何か。(情報公開の方法 超大学活用法)
 開かれた大学とは、何をやっていて、どういう方向に動こうとしているのかという情報が、公開され評価され認知されるという仕組を取ることだと思います。特に、税金で賄われている大学の場合は中身が不透明ではいけない。会計を含め、教育・研究の面での情報公開が不可欠だろうと思っておりまして、この方面での努力をしているところでございます。そういうことをしながら、大学外の方々が大学をいかに活用するか、その道を皆さんと一緒に考えるということが、これから益々必要になってくることだろうと思います。これまで、大学は何をやっているかわかないという声がたくさん寄せられました。これは大学の責任であります。しかし、一方社会の人達が大学を活用するすべを考えてこなかった。そして端的に結果が現れてくる海外の大学に投資するという仕組で動いてきましたが、これでは日本はダメだということにやっと気が付いて、「じゃあ日本の既存の大学にお金を投資して、少し期待しよう」というのが現状だろうと思います。

(2)やっと半開きの小樽商大(地域懇談会、自己点検評価、研究者総覧、教官の発言、具体的な動き
 情報公開にはいろいろあります。このカッコの中に書いてあることは、各大学ともやり始めています。私どものところでも地域懇談会や自己点検評価報告書といった、大学の検討状況を明らかにして、ここは改善していくということが外部にわかる資料を作って学外にも配布するという形のものや、研究者がどういう仕事をしているかがわかる研究者総覧を定期的に刊行するということをやっています。昨年末にはホームページを立ち上げて、教官の研究内容等の紹介もし、同時に教官の採用の情報も提供するということをやりました。教授だけは指名して「この人が欲しい」という人事がありますが、教官の採用を公募でやっているということは社会に伝わらない。それでホームページにその記事を出すということをやり始めました。昨年は画期的なこととして、日本経済新聞の全国版に[大学の先生になりませんか]という広告を出しました。それで問い合わせの件数が150件に達し、その中から膨大な時間をかけて審査をして、やっと決めたところです。この方法については、賛否両論であります。全国的に良い人を集めるという仕組としては、本学のように社会科学系の大学の場合には、経済新聞に広告を出すということは、圧倒的に良い効果を出すわけですが、一方OBの側からすれば「商大は、何でこういうことまでやらないといけなくなったのか」「こういうことをやらないと良い先生が来てくれなくなったのか」というマイナスの評価があります。しかし、広く人材を世界に求めるという意味では、やったほうが良いという結論を出しました。情報を社会に提供するという意味でも効果はあっただろうと思います。

(3) 外部評価に耐える努力を(小樽商大の今後の課題)
 これからは、いろんな形での外部評価が必要になります。学外のいろんなタイプの人に加わっていただきオープンにして、大学がこういうことで良いかどうかという批判を受けなければいけない。中でごちゃごちゃやっていてもダメで、海外あるいはの仕組を定着させて、大学もそれに耐える努力をしなければいけないということですが、これは教官にとっても非常に重荷になります。社会科学系の大学の場合は、息の長い研究があり、数年間論文を書かないけれども、一生懸命作業はしていて、大きな論文を出すということも有り得るわけです。そういうことも全部排除されて、毎年何件か論文を書かなければいけないということになると、品質が低下する可能性があります。今、多くの国立大学では業績主義が蔓延りだして教育が手薄になり、ただ論文の数を書けば良いという点数稼ぎのような風潮が生まれてきているという問題があります。外部評価については、そういういろんな問題を抱えていて、単純な問題ではないと思いますけれども、大学の使命として厳しく受け止めてしなければいけない作業だと考えております。

(4) 国立大学は存続するか(私学も国から助成を受け規制も受ける、この構図をかえないと大学の個性化、多様化はない)
 これについては、先にお話しました。

(5) 強力な同窓会の存在と支援は大学の大きな財産
 日本の大学は、同窓会が軽視されています。大学から見ると、同窓会は頼りにならない。同窓会の立場になると「あんなものに入っても何のメリットもない」というような形で、比較的同窓会の存在が薄い傾向があります。これは社会から大学に対して寄付をするという習慣があまりないことと軌を一にしている問題だと思います。海外の場合は、強力な同窓会があって、大学を支援する仕組がかなり働いているところがありますし、慶応大学のように、毎年卒業生に寄付を求めるという大学もありますが、一般的に国立大学は同窓会が希薄です。本学の場合は幸いに、規模的にも単一学部であることからも、小樽工商以来の非常に強い支援を受けています。平成元年に5億円の募金目標で活動を展開していただいて、1年半くらいでそれが集まり、それが基金となって後援会助成金という形で、大学に決まったお金がいただける仕組になったわけです。当初2千2百万の助成金がいただけました。それから金利の低下が続きまして、今年は8百万くらいになってしまいますので、このままでは事業展開している国際交流も、研究支援体制も何もできなくなるという危機感を抱きまして、同窓会とお話しをして、今後5年間毎年2千万下さいというお願いをしました。そして昨年それが同窓会で認められました。なぜ2千万かというと、これは金利の取り崩しであります。金利の取り崩しを認めて下さる同窓会というのは、私の知っている限り、国立大学にはありません。皆さん金利の範囲でやるのが筋だということで動いておられる。私は金利を取り崩してもやらなければいけない事業があるんだということで了承をいただいたわけであります。その事業というのが、新聞にも出ています、学外オフィス・札幌サテライトの設置であります。これも同窓会にとっては懸けみたいなものでありまして、それを認めていただいた同窓会は懐の深い同窓会だと敬意を表しているのですが、これが上手くいかなかったら腹切りものだと私は考えております。ともかく同窓会と大学が一体感を持って事業を展開していくということが、これからの大学には不可欠だと考えておりますし、私どもの場合は「オール商大」という言い方で、卒業生と教職員、学生が一体感を持って一つの動きになるようにしなければいけないと言い続けてきたわけであります。こういうものがありますと、民営化になっても恐くないのです。学校法人を創っても、同窓会が主力になって運用する仕組が多分取れると思います。幸い社会科学系の大学ですから、同窓会の中心になっていらっしゃる方は金融の専門家ですので、そういうところが理事会に加わっていただいて学校法人を経営していくということになれば、民営化しても、むしろ文部省の規制を外れていろんな展開ができるということも考えていかなければいけないと思います。 ともかく、大学の外に大学を支える仕組を作って動いていかなければいけないと考えております。そのくらいのサポートシステムを皆が大学に向けていかないと、大学が育たないのではないかと思います。例えば中曽根首相の時に、留学生引き受け10万人計画というのがありましたが、最近では6万人くらいに減ってきています。それは「日本に来ても、いつ学位が取れるかわからない。それだったらアメリカに行って早く学位を取った方が国際的に通用する」ということなのです。だいたい日本では先生達が持っていないのはなぜなのかという問題から考えていかなければいけません。それから寮も完備されているわけではありませんし、いろいろな意味から日本に来る意味がないと考え出しているわけです。文部省は留学生を増やして貢献したいという意欲はありますが、財政的に縛りがありますので、数値目標を出しました。本学では20名くらいの留学生がおりますが、そうすると日本語の教師1人も要求できないし、寮もできません。「こういう設備を作るから留学生を受け入れて下さい。これが国策なんです。」ということにはなっていないのです。こういうことをやっている限り、国際交流は大学にとってお荷物になります。 ですから考え方を変えなければいけないのですが、本学では「国際交流は日本人の学生のために必要である」という考えから推進してきました。そのバックグラウンドには、同窓会の資金援助があるということになります。年間1千万ベースで、国際交流にお金を使ってきました。つまり助成金の半分は国際交流に回していたのです。それが呼び水になって、日本国際教育協会や文部省から、留学生関係のお金がどんどん来るようになりましたが、まだ足りません。海外の協定校は6校あり、そういうところの学生が行き来して、今、大変良い空気になっております。学生のボランティアグループが留学生といろんな交流をして、助けるという仕組ができあがっていて、小樽の街の中にまで広まって来て各種団体との交流も進み、やがてホームステイ協会ができるところまでいっています。このように現実に、国費ではなく、学外のお金をあてにして国立大学としての役割を果たしているという状況になっています。そういうお金がないところは、したくてもできないというジレンマを抱えているわけで、私どものところは非常に恵まれていると思います。ですから私は、同窓会というのは単なる親睦会ではなく、本当の意味で後援会的な同窓会を強力に作っていかなくてはならないと思います。

2・小樽商大が果たすべき役割

(1)大学の基本は質の高い教育を提供することにある(アカデミズムは重要)
 言うまでもありませんが、これを忘れては大学は成立しません。しかし言葉は容易でも実行するのはかなり大変です。例えば、一つ橋大学から良い先生を引っ張ってくるためには、どういう受け皿を用意するかというと、実はお金ではなく時間なのです。研究するための時間をどのくらい確保できるかということをいかに保証するかということだと思います。ですから、研究所を創ったとして「研究所専任の教官になって主力は研究に注いで下さい、そして一部を大学に加勢して下さい」というくらいのことができないと、東京から良い先生を引っ張ってくることは難しい。そういう現実問題をどうクリアしていくか。北海道は大学のメッカになれる土地柄です。これだけ豊かな自然があって、のびのびした空間がある。そういうところでこそ、本来の研究ができるのであって、東京のように通勤だけで2時間も3時間も費やしているようなところで本来の研究ができるはずがありません。そういうセールスポイントをたくさん作って、北海道に来ないと損だよと言い切れるだけのものを作っていかないといけないと思っています。
 一方、産官学とは言いながら、アカデミックな研究をきちっとできる保証が大学に不可欠であります。すべてが応用ではないので、アカデミックな部分の学問の強化を忘れてはいけない。そういうことをやりながら、産官学の道を模索していくというストラテジーが重要だと私は考えています。

(2)地域社会への貢献(産官学の共同研究はその一部にすぎない:重要なことは地域社会の様々な分野でコアとしての機能を果たすこと)
「国際化という言葉があるのは、まだ国際化がされてない」という言葉があります。産官学も同じだと思います。もともと大学が社会に役立つ機能を持つというのは当たり前の話しであります。それが今までできなかったのはいろいろな理由がありますけれど、今はそれを詮索してもしょうがない時期であります。産官学ということだけでは大学は動きません。その一部を活用するということであって、しっかりした基礎研究をやりつつ応用面の人材を引き入れて、そういう人達が社会貢献を果たしていくものになるという両面作戦が必要だということであります。私は大学でできることはオールマイティーではないと考えていますので、できることは同じ問題を議論する人達の土俵を作ることに大きな意味があるのではないかと思っています。そういう場所を設けながら、皆の知恵を絞って一つの力にしていくという努力を大学がする必要があります。

(3)社会科学系大学の役割の一部は理工系大学と共同で総合力をもつ人材を育成すること
 今、単科大学同志で連係プレーをしようという動きが少しずつ出始めています。具体的に北海道でやり出したのは室蘭工学と小樽商大のジョイント公開講座で、もう3年経っています。理工系と文科系、社会科学系の相乗りで共通のテーマでいろいろ考えようというのが狙いです。それが公開講座だけで留まるのではなく、お互いの研究者が交流して一つの成果を上げていく道を模索しております。総合力を持つ人材とは何かというと、例えば工学系育ちの人が企業に入った場合、経営のノウハウを勉強しないと駄目だということを痛感して、うちの大学院に入りたいという人達もいます。いろんな意味で違った勉強をせざるを得ない立場になるのに、うちの卒業生ですと工学系のメーカーに就職したけれど、工学的な知識がゼロのために、営業にも差し障りがあるから工学系の勉強もしなければいけないという人も出てきています。そのように大学院レベルでは自分の育った学部と違った畑の学問をしたいという要望が随分出てくるようになりました。そういう意味で、これから必要な人材は視野の広い、将来の視点を据えた考え方のできる総合力を持った人材だろうと思います。
 例えばそのような流れを考えているのは、本学と室蘭工大だけではありませんで、最近非常に鮮明になってきたのが一ツ橋大学と東京工大です。総合大学ですが、限りなく単科大学的な動きのできる大学です。そういうところが既に授業の相乗りをやり始めています。更にメディアを使った授業が取り入れられるはずであります。
 そういう形で、比較的近くにあって密接な関係が保てるような大学同志が手を結んで、総合力を持つ人材を育成しようという動き方をしています。もともと総合大学というのは学部同志が手を結んで、そういう総合力のある人材を排出しなければいけない使命を持っているはずですが、残念ながら学部卒だけで精一杯であるという状況です。そこで各大学で工夫したのが、大学院レベルで理系文系の区別なしに一つの教育システムを作ろうという新しい動きがあります。私は、単科大学の良さを生かしながら個性的な大学であると同時に、そういう大学が集まってネットワークを形成し、文字どおりのユニバーシティーシステムを作り上げていくことが必要ではないかと思います。

3・小樽商大の改革の方向性と試み

(1) 大学院の充実
 実は18歳人口の減少という問題が大学に突き付けられていて、平成20年になる前にそのピークがあります。その状況になった時に、入りたい大学に皆入れるという状況になると、学生のレベルとしてはピンからキリまでということになります。そうなると、今までのような大学教育は成立しない形になります。そして基礎教育を大学でやらなければいけないという状況になるのではないかという恐れを持っています。今でも現実に補習授業という名前で、大学に課せられてきそうな状況です。そうであれば我々の方が主体的に「ここまで勉強しなかったらうちの大学には入れない」ということを言った方が良いのではないかという議論すら出てきています。さりとて今のようなやり方をやっていますと、大学の方がこのような言い方はできないだろうと思います。それは当然受験生が減って大学の経営が成り立たないという恐れがあるからです。そうすると学部の教育は否応無しに専門の基礎教育的なセンスで教えなければいけなくなる。本当の意味での専門というのは大学院レベルになってからという仕組になっていくだろうと思います。その代わり良く勉強する人は大学3年から大学院に進むことができる道をどんどん採用する。そしてマスターコースは、1年でも卒業できる仕組になっていますから、4〜5年で大学院まで卒業できるという事になります。それに合わせて大学院の充実を考えていかなければいけませんが、私が今大学院の充実を考えるのは、高度職業人対応のためです。 要するに一生懸命やろうとする社会人のために大学が再教育の機関としての機能を果たさなければいけない状況になってきているのです。それをいかに作り上げていくかというのが私の大学院に課せられている使命だろうと考えています。そして将来的には夜間大学院を充実させなければいけないと考えているところです。

(2)経済研究所の改組
 そのためには経済研究所の改組をして、良い先生を集めると同時に、社会的課題の研究テーマを考え、そこで市民の皆さんと知恵を絞って良い成果を出していくという共同研究的なものを進めていきたいのですが、私が考えているのは、その中に大学院生を入れるということです。実際に現実の問題を産官学でやっていく中に、大学院生を入れて一緒に考えて、彼らは自分の立場で論文に仕上げていく。そうすると直ぐその問題が社会に出て花開いていくと思います。そういう形で研究所の機能をしていく。研究所といっても大学にあるわけですから、教育と研究の両方の機能を持つ必要がある。同時に大学院生は海外にどんどん派遣し、そこで勉強し日本ではできない仕事を経験させるということをやっていきますと、今は大学院生を企業がなかなか採ってくれないのですが、「これだけの人材がいますから企業で採らないと損ですよ」という大学院生を育てなければいけないと考えています。

(3)札幌サテライトの設置
 今、社会人で大学院を目指すかなりの人達は札幌から通っておられます。仕事が終わってから来るわけですから大変です。それをカバーするために、札幌で教育する場所を探す必要があるということは前から考えておりました。それの現れが札幌サテライトの一部でもあります。同時に産官学の研究をする場合でも札幌に拠点があった方が現実に集まりやすいということで、「ではこちらの方がでかけましょう」ということで札幌サテライトを考えたということです。つまり研究プロジェクト推進の拠点であると同時に、空いている時間帯を大学院の教育の一部にあてるというストラテジーで考えております。そこで、小樽キャンパスと情報のやり取りができるような仕組にしておくという形で動かします。4月からはオープンする予定ですが、皆さんも大いに活用して頂いて有効に機能するようにお知恵も拝借したいと思っています。

具体的なプロジェクトの中身としては、
1・地域経済社会システム研究会所属教官による共同研究
2・金融システム研究会
3・北東アジア企業研究会
4・小樽商大APEC研究会
5・マーケティング研究会
6・会計研究会主催の会計学全般に関する




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