
新北海道産業政策・要旨
はじめに
21世紀に向け、我が国の随所で始まっている国際社会で活躍できる経済活力を高めようとする取り組みに、取り残されず、割を食わず、我が国経済社会全体の発展に貢献する地域を築くため、北海道で今必要なのは、改革の痛みを乗り越える勇気、新たな挑戦を続ける意欲といくばくかの賢さ、そして行動。この「新北海道産業政策」は、諸提言を参考にしつつ、北海道産業の現状を実態に即して把握・分析すること等により、通産局の現在の政策遂行力、今後の政策対応等を明らかにしたものであり、できることから一つ一つ着実に推進。また、道内外各界各人がこの政策を適切に評価・批判し、かつ、北海道経済の持続的発展を目指した本政策の効果的推進に向け、連帯・協働するよう働きかける。
第1章
1・現状認識
(1) 北海道産業・経済の現状
1.製造業の比率が低い産業構造と薄い産業集積。
2.一般公共事業費の10%以上が毎年投入されている中央依存的経済構造。
3.世界の中でも高コスト構造にある我が国経済の中で、さらに上乗せされている北海道特有の高コスト構造の依存。
北海道の高コスト構造
(1)俗に「北海道価格」といわれる価格そのものの差ではなく、北海道のコスト構造のメカニズム分析に力点。
(2)北海道の高コストの要因
1.北海道産業の大部分は「高コストの事業環境」にあるか、「高コストの事業環境を他の産業にもたらしている」ことが判明。
2.検証の結果、3つの要因に集約されたものの、どれも独立した要因としてよりはそれぞれ密接・複合的に関連しており、発生源の特定は困難。
1)「地域の産業構造の特性」がもたらした高コスト構造
産業の集積が薄く、分業体制が未発達→効率の悪い内製化等。
2)「地域産業の企業行動の特性」がもたらした高コスト構造
エリアビジネスの割合が高く(8割)官公需依存度も高い等、必然的な地域閉鎖的商慣行等が形成。
3)「地域産業のモノ・人の流れの特性」がもたらした高コスト構造
首都圏から遠く、モノや人の移動コストが高い。物資需給のインバランスによる片荷輸送問題等。
1.操業形態を変えずに中堅一般機械製造業が北海道で操業する場合の総コストは、全国平均に比べ(5.9+α)%高い。
2.電力供給、石油、国内電気通信等、主要高コスト産業9部門の生産量を変えずに価格を一律10%下方変動させた場合の他産業が受けるコスト改善効果を比較すると、総じて北海道は、全国より弱い状況。
(2)現状からみた北海道経済の先行き
1.公共投資基本計画の圧縮による北海道経済へのマイナス経済波及効果等から、道内GDP引き下げ懸念。
2.2004年時点の道内における雇用の場は、7.0万人の減少見込み。
製造業・・・・・・・・・・2.3万人の雇用減
建設・同関連サービス・・・4.7万人の雇用減
(3)活用すべき優位性発揮可能な道内資源
非日本的ともいうべき異質性と発展可能性は、北海道の大きな特徴であり、国際的な地域間競争が激しくなるときに優位性として機能し得る要素。
1.広大さ、新しいものを容易に受け入れ得る風土、高い域内完結性等により、 我が国全体の飛躍的発展の舞台づくりを目指す地域限定的な“壮大な挑戦的取り組みの展開”が可能。
2.豊かな自然環境、札幌の都市機能、北大等教育・研究機関の集積など、優秀な頭脳招致に資する基盤整備の進展に加え、世界でも最高水準の研究開発プロジェクトの受入れ可能な用地が確保済み等、“新規事業創出”が 可能。
2・目標
北海道は、「異質性に彩られた発展可能性」により、我が国全体の発展に貢献できる地域。持ち得る優位性を最大限に活用しつつ、経済活動の持続的発展及び良質な雇用の拡大を目指し、以下の目標を掲げ、効果的に産業政策を展開。
1.新規事業で良質な雇用の場の確保
「経済構造の変革と創造のためのプログラム」(閣議決定H8.12.17)に基づき、遅れを取り戻し、全国水準で新規事業、新製品の開発等により創出があった場合、北海道で期待される雇用の場(2004年)は、5.6万人と試算。
2.世界最高水準の事業活動環境を「札幌〜千歳・苫小牧〜室蘭圏」に創出
3.高コスト構造解消
3・政策の基本的考え方
(1)二本柱の対策
上記目標を達成するため、以下の二本柱を着実に推進。
【短中期策】(5年間を目途)
在道企業の競争力なかんずく価格形成力の強化に寄与する支援及び環境整備の推進。北海道経済の持続的発展に寄与する企業・事業の誘致、環境整備の推進。
【長 轄】(10年間を目途)
高コストの解消等構造改革の推進。
(2)理念
上記対策を進めるに当たっての基本理念は、「市場主義」の浸透とそれへの積極的な対応であり、以下の4つに整理。
(3)競争促進
より競争的な市場環境の形成が重要との認識に基づき、「出る杭を伸ばす」重点型振興施策へ転換。
1.優位性の活用
「出る杭」(企業や事業)を伸ばすため、環境・文化等の異質性、強い競争力を有する核(「優位性」)を活用。
2.連携
強い核との連鎖を結ぶため、事業者同士、支援者同士、事業者と支援者の連携、地域内、域外重要拠点との連携、需要家サイドとの連携を促進。
3.対等な仲間意識
連携に際しては、一人一人が組織の立場にとらわれることなく、イコールパートナーの立場で問題解決に取り組み、貢献することを期待。
(3) 手法
実態に即した、関係者一人一人が直ちに活用できる「北海道自らの地域産業政策」を目指すとの視点から、フィールドワークを重視。その結果、政策手法は、これまでの業種別政策に加え業種横断機能別政策、地域政策の3つをバランス良く複合的に推進。
第2章
1・業種横断機能別政策
(1)新規事業開発
北海道でも取り組みは活発化し始めているが、各界の支援策は緒についた段階。
新規事業の成長過程で必要なのは、事業成功に不可欠な「技術」「資金」「マーケティング」「経営」の四要素の充実に資する施策と、これら個別要素の総合化に資する施策。当面は、各支援機関がそれぞれ、多種多様な取り組みを進めていくことが現実的。ただし、一定の期間経過後、それら施策の有効性をユーザーを含めて評価。
(2)技術開発
本道では、高低様々な水準のニッチな技術分野が大宗。大学、国研等と産業界の技術水準にはギャップも存在。個別企業に対する技術開発支援策は整備されつつあるものの、産学官連携の動きは緒についたばかり。当面の間は、分野の絞り込みを避け、道内に存在する技術・研究シーズ一つ一つの洗い出しを通じて、国際競争力を有するポテンシャルの高い技術の開発を推進。このため、産学官連携強化及び研究基盤そのものの強化を推進。
(3)情報化
高い技術力を有し国際的に活躍する情報産業も存在するが、一般的にいって北海道の情報化は発展途上。「地域の情報化」とは、具体的には1)産業・企業分野の情報化(情報武装)、2)公共分野の情報化(利便性向上)、3)家庭・個人分野の情報化、C情報産業(そのもの)の振興、D情報基盤活用型産業の創出・育成。
上記5分野が相互に牽連することを踏まえ、情報化政策はユーザーを強く意識しつつ先進的事業やモデル事業に対する支援、人材育成等により、多目的に推進。なお、自治体に対しては、自らが事業主体となるよりも挑戦的なユーザーになることを期待。
(4)環境・安全
廃棄物・リサイクル問題は、生活・都市型環境問題の代表的存在。リサイクルの促進による廃棄物の減量化を目指し、当面、容器包装リサイクル法の導入円滑化に努力。また、北海道のクリーンかつ「健康的」といったイメージを活用した環境関連事業、「安全」イメージ活用産業の展開可能性について検討。
2・業種・分野別政策
(1) 成長が期待される分野
1.医療福祉関連
道内で、長期的には医療福祉工学の発展を期待するも、当面着目すべきは、積雪寒冷地に対応した製品ニーズが高く、道内企業と研究機関の連携が進み、参入可能性の高い「福祉機器分野」。先進的協働研究を継続推進する一方、機器の安全性、信頼性向上を目指す。
2.住宅関連
道内には、高気密・高断熱技術に関する高水準の技術力を活用して移出型企業への転換を目指すなど、意欲的な企業群が存在。これら企業群の事業環境整備を、規制緩和等制度上の課題への対応を含め、重点的に推進するとともに、住宅の性能評価・表示制度の導入円滑化等を関係機関との連携の下、実施。
3.耐雪都市施設関連
大規模ロードヒーティング等官公需は低減傾向。一般家庭向け機器市場は拡大傾向。長期的には、地域熱供給等を伴った街づくりの中でシステムとしての採用を促進するが、当面は、家庭用ロードヒーティング$融雪機、融雪槽等個々の融雪機器の発展に力点。まずは、道内融雪機器メーカーの機器の改良促進、製造コスト削減への取り組み等を関係行政機関と連携しつつ支援。
(2)食関連
「食」関連産業は道内最大の産業群。「川上」に当たる農蓄水産等の食材生産部門、「川中」の食材加工部門、「川下」の流通・販売等食品提供部門に大別。「川上」は、価格安定制度等各種規制が存在するものの、農蓄水産物の輸入の増加等厳しい競争状態に直面。「川中」は、「川下」からの納期短縮、価格引き下げ要請が激化。消費山と直結する「川下」の多くは、卸売市場を経由して食材を調達する結果、潜在的消費者ニーズを生産者に繋ぐことができない構造。道内「食」関連産業の競争力強化のためには、差別化商品の開発、コストダウン及び物流面での改善が必要であり、これらを進める上では、「食」関連産業の「川上」〜『川中』〜「川下」間の「連鎖」を重視。当面、事業者の自助努力の余地の大きい食品加工業を中心に、最終消費者の視点を重視した「連鎖」の構築を支援。
(3)観光関連
関係行政機関が多岐にわたり、政策に整合性がとれていないとの指摘。伝統的な観光分野の政策を超える、農業政策、開発政策、都市政策、自然環境政策を総合した幅広い視点からの総合的な政策づくりを、モデル地域でのケーススタディ等により、関係行政機関の協力の下、成し得る範囲で貢献。
(4)商業
中心商店街においては空洞化現象が顕在化。地域の顔としての役割の機能低下を食い止めたいとする上での、抜本的な商店街対策を求める声が増大。地域の顔となる中心商店街について、都市整備の一環として位置づけ、都市政策を中心に福祉政策等と連携して対策を進めることを基本とし、商業者はもとより、市町村の役割を重視。近隣商店街及び個店対策については、意欲的な事業者に対し引き続き駐車場整備に対する支援等により、積極的に支援。
(5)エネルギー
道内のエネルギー需要は民生部門のウエイトが高く、石油依存度も高い。民生部門や運輸部門の省エネルギーの施策効果は不十分。@エネルギーと環境、都市開発、教育、町おこし等地域との関わりを重視した取り組み、A国の支分部局等との連携による運輸部門の省エネルギーの取り組み、B天然ガス等を活用した産業の創出・育成を目指した取り組み等の地域に即したエネルギー政策を重視。
3・地域政策
北海道においては、地域の国際的な競争優位を戦略的に形成することが経済発展の鍵。 このため、北海道経済発展の「核」づくりを目指し、発展可能性の高い地域に国際的に魅力ある事業活動環境を重点的に整備し、「新産業創造拠点」を形成。各中核都市圏においては、ブロック圏域全体の産業活力増強と雇用維持を目指し、核となる産業、研究集積等を活かした拠点化の促進に資するプロジェクトを推進。北海道全体は、道央圏、地方中核都市圏、農山漁村地域等、各地域の特性・条件と役割を活かした効果的な社会資本を整備。
(1)道央圏
潜在可能性と役割に見合った政策資源を投入。人口、産業、産業支援機能等の集積効果を活用した産業の育成と新規事業創出の仕組みづくりを行なうとともに、国際競争力のある事業活動環境を整備することにより、国内外の企業を誘引し、北海道経済発展の牽引役となり得る「新産業創造拠点」を形成。
(2)地方中核都市圏
各圏域の特色を活かした産業の拠点化、地域の拠点化の促進とともに、一次産業を含めた圏域全体の産業連鎖の強化・拡大により、産業活力の増強と圏域全体の雇用を維持・拡大。
(3)農山漁村地域、中山間地域
生活に必要なサービスが一定の範囲で享受でき、地域の自助努力による発展が可能となる社会生活基盤を、広域的な視点から整備推進。特に、各市町村の個性・機能を活かし、相互補完しつつ共同で取り組む先導的な広域連携事業を中心に、産炭地域振興施策、電源地域振興施策等により支援。
4・構造政策
北海道における高コスト構造の改善には、地域経済発展の「基盤」となるような産業・企業の集積に向けた取り組みが必要であるものの、早急には効果が現れづらく、長期的取り組みが不可欠。一方、エネルギーコストや物流コスト等、それ自身が改善されることにより北海道の高コスト構造是正に資するものも存在。高コストとの指摘が多く、産業全体に与える影響が大きい分野及び他地域と比べ是正の波及効果が大きいと考えられる分野から検討、取り組みを開始。
改革には、既得権喪失等相当な困難が伴うと予想されるが、その受容とともに、北海道基準の設定や重点投資すべきインフラの選定等、地域の主張を整理、