
われわれは(10名の専門家からなる)、北海道産業クラスター創造研究会の要請を受け、「食」分野(農蓄産業、農業機械、食品加工機械、廃棄物リサイクルなど)における、新たな企業起こしの具体的なプロジェクト提案に向けて、目下集中的に検討を行なっている過程にある。
2・可能性のあるいくつかのプロジェクト
食産業検討委(仮称)の各メンバーから持ち込まれた素案は合計130余りに達し、これまで開かれた9回の研究会で、多少なりとも実現の可能性があると考えられたプロジェクトは以下のようなものである。
3・新たな企業起しのための諸視点
1) 自らの足元を固める 北海道の食関連産業起しを考える場合、全国展開に先立って、自らの郷土としての北海道での市場開拓をまず優先すべきではないか。地元産のミネラルウオーターが、なぜ遥かに離れたフランス産のミネラルウオーターによって苦戦を強いられているのか、なぜ、農業王国といわれながら、学校、病院等における「集団給食」の食材供給において、十分なシェアーを確保することができないのかなど、北海道農産業の市場競争力の弱さが目につく。 北海道農政部「集団給食に関する実態調査報告書」(平成元年3月)は関係者の意見として、「輸入ものは(肉類)、安全性などに関して懸念もあるが、価格上使用はやむを得ない」(価格競争)、「道産ものは(野菜)、出荷期間が短いため総体的には余り使えない」(供給期間)、「原料を本州に持っていき、加工して北海道にUターンしてくるものも多く、食品企業の努力が必要である」(加工技術)、「道内関係者はほとんど売り込みに来ない」(営業活動)、「うまいから買えでは商売にならないことを認識すべきである」(セールス)などの指摘がなされている。 道内の学校給食用食材供給業者の心情を、同書は次のような言葉で報告書をしめくくっている。 「道産ものについては、極力取り扱いたいのだが、売らなければならないので、でんぷん、味噌、醤油、ごく一部のコロッケなどの加工食品以外はほとんど使えないのが現状である。まず価格が問題となり、業務用としての種類も少ない。また加工食品については、道内メーカーは同じ調理品を作っても、味や製品品質の面でもう一歩であり、製品開発にチャレンジする精神が不足している。」
2) 消費者―供給者、異業種企業間とのリンケージを密接に 食産業の新たな企業起しを考えてみて思うことは、関係する分野が広く、かつ膨大な関連知識が必要とされるということである。新たな企業起しのために、これまでに残されている分野については、経済的、技術的、制度的な諸制約条件が強く存在する分野でもあるといえる。従って、産学官のあらゆる関係者の相互協力が絶対に必要である。 また、わが国の場合、消費者側の「食」に対する嗜好変化が著しく、かつ、スーパー、コンビニといった小売り段階でのコントロールも強いという問題がある。一般大衆の嗜好の変化をどう先取りするかは、食品加工産業にとって大きな問題である。大衆の消費パターンは絶えず動いており、その動きつつある変化に対応して、商品提供者としての農産物加工産業も敏感に対応する弾力的体制作りが求められる。絶えざる消費動向調査が必要である。
3) 失敗を恐れぬ企業者精神を 大消費地から離れて原材料生産を担う川上地域に立地する加工企業にとって、事業失敗の可能性は、消費地立地型企業に比べてより大きくなる可能性がある。原材料仕入れの産地選択が限られることに併せて、消費者の変化が見えにくくなるからである。 従って、商品開発に当って、企業化の当初からヒットするということは考えられず、たえず「最悪の状態」への対処を考慮に入れた企業起しへの対応が必要である。失敗を恐れぬ企業者のみが、食産業起しの適格者ではなかろうか。また、このことはあらゆる企業者に共通していることと思うが、経営成功者のポイントは、「計画性、打算能力、実行力」の3つの経営者能力に要約されるように思われる。