
基調講演 「BAAの事業内容と空港の民営化」 去る8月11日、世界最大の民間空港管理会社BAAの協力を得て、BAAの太平洋・アジア地域の責任者であるティモシー・H・アイリス氏を札幌に迎えて、産学官協力国際シンポジウムが、北海道国際ハブ空港研究準備会との共催で開催された。以下は、基調講演をされたアイリス氏の講演内容である。(詳細は報告書) BAA発足の経緯 私は、このようなセミナーに日本で3回出席しております。その度に、必ず聞かれる質問というのは、「お歳は幾つですか」ということです。私は1960年生まれですから、当年とって38歳でございます。この38歳という年齢は、特に日本の企業において重役としては非常に若いということです。ですが、ここで少し皆さんに思い出して頂きたいのは、ボーイング747という飛行機ができて、それが初めて出航しましたのが1968年です。また、空港が民営化されるということは、ここ10年で起こったことです。ですから、私が申し上げたいことは、これから話す産業というのは非常に新しい産業であるということです。BAA英国空港社と申しますのは、民営の企業で空港の運営を手掛ける会社です。この点に関して私どもは非常に優れております。従来、歴史的に見ると航空ビジネスと申しますのは、空港施設の設計と建設というものに限られていました。他の公共事業団体と比べると、その点で違っておりました。ですから、そのような建設事業等を請け負っております側の者と致しましては、その空港がどの程度の利益を得るのかやサービスの質がどうであるのかということは全く関心事でなかったわけです。しかしながらBAAと致しましては、私どものビジネスの関心事と申しますのは、現在、所有運営しておりますこれらの空港の建設・デザインのみならず、それらがビジネスとして充分な収益を上げることができるかということも含めて責任を持っております。 空港の民営化について ここで、空港の民営化ということに関しまして、一般的なお話をさせて頂きたいと思います。歴史的に見ますと空港の所有、そして融資等は長らく公的部門にありました。ということは、結果的には政府が所有する、そして政府が財政面で責任を持つ機能体であるということになります。そして空港が顧客とみなす、この場合は航空会社に対して、政府から支援を得て各種サービスを行うということであります。結果的にみますと納税者がその経費を負担するということです。納税者が空港管理のために資金を提供し、そして、サービスを利用する乗客になってもコスト負担するということでありました。ですから空港も政府所有、航空会社も国営ということで、税金を使うけれども収益を上げようという努力が全くなされていなかったということ、そしてまた乗客の利便に仕えるという姿勢も全くなかったのであります。以上申し上げましたのは、100%国営の企業である航空会社ならびに空港会社であります。もう一つの空港会社と申しますのは、例としてアメリカで見られるのですが、公の部門で所有されているのでありますけれども、その中に幾分民間からの融資が入るということです。3番目のタイプは、所有・融資も全て民間部門が請け負うというものであります。ということは、つまり空港は収益を上げるために管理運営されるということです。そして収益を上げるためには、できるだけ多くの利用客を引き付けなければなりません。利用客が望むようなサービスを提供しなければならない。利用客が買いたいと思うような製品を見せなければならない。そして宿泊施設等のサービスが優れている、また利用する航空機も非常にサービスが優れているというような、顧客が満足するようなものも提供しなければならない。ここで、私どもが考えております空港に関する経済学の基本項目を3つご披露したいと思います。まず、スケールの問題であります。飛行機の到来が多ければ多いほど乗客一人に対するコストが下がるということ。2つ目は国際輸送ということになりますと、コストよりも収入の方が高くなる。3つ目といたしまして大きな開発と申しますのは、単位当たりのコストをどうしても引き上げてしまうということであります。以上のことから、皆様がお考えの空港開発にどのような関連が出てくるのでありましょうか。第一の項目に関して申し上げますと、できるだけ多くの利用者を引き付けてくるということです。非常に重要なのはとにかく大人数です。2番目の国際的な運航が非常に有利であるということに関しましては、できるだけ国際線を入れるということでしょう。 BAAの比較優位性 これは独立系の国際旅行関係のコンサルティング企業であります「チャーバスモーガン」が出しているインデックスの一つであります。この中でヒースローとガドイックがピンクで記されていますが、様々な空港と比較して使用料が低いということがお分かり頂けると思います。ここに3つ程、抜き出ている空港があります。これは使用料があまりにも高すぎて、この枠内に入らないというところです。私は日本へ客として参っているということから、わざわざこの空港がどこであるかということを名指しするのは差し控えたいと思います。航空産業の分野で民営化をぜひとも進めて参りたいとお考えになるのであるならば、3つの点をお考えになる必要があります。それは、何を売るのか。誰を対象に売るのか。そしてその方法はということです。それではBAAの民営化後の業績をいくつか見ていきたいと思います。投資関係ですが、これは向上しているのでしょうか、またサービスの質はどうでしょうか。使用料はどうでしょうか。このような企業で働く従業員の感想はどうでしょう。この10年間でスタッフの勤務姿勢は変わったのでしょうか。また、収益・株価はどうでしょうか。 安全対策と小売部門 安全対策については、毎年1億5千万ポンドの投資を行っております。この安全対策に直接関わっております従業員は全従業員の35%になっております。空港の安全対策ということは、私どもにとりまして最優先事項であります。空港を経済的に有利に運営するということに関しまして、安全管理を徹底して35%の従業員の数を下げていくということも一つの方法であります。しかし分かっていてもそうするつもりはございません。それ程安全対策は重要だと私どもは考えているからでございます。BAAの管理運営で非常に画期的なことと申しますと、小売部門を上げることができます。その小売部門の幅と選択を非常に大きくして業者に提供しております。様々な多くの専門店を中に入れました。私どもと致しましては、空港で売られる商品は空港外の一般のお店で売られる価格よりも決して高くないということを政策の一つにしております。その結果、この10年で小売関係の売上が3倍強となりました。私どもの最高のお客様は日本の方々です。私はアジア担当になる前に法律関係部門の仕事をしておりました。英国でお客様からの不平不満の処理に当たっていたわけです。その中の一つのことと申しますのは、空港内で売っております価格の表示が日本語だけのものがあり、それに対するクレームがついたということがあります。英国の旅客はそれが気に入らなかったということで、日本語だけの表示は止めました。英国で止める変わりにどこか他の国で日本語の正札を使いたいということで、それならば日本ということで、私どもはただ今日本にとても強い関心をもっております。小売部門でありますが、これは利用客に非常に人気があるものを手掛けております。このビジネスの場合も同様、利用客が欲するものを私達は提供するということです。私どもの利用客の90%がBAAの空港で総合的なショッピングセンター等のように、ほとんど何でも手に入るというバラエティに富むお店があることを望んでいますし期待しています。BAAの小売業ですが、私どもが「ワールド・デューティーフリー」と呼んでいる免税店を中心に様々な商品の販売の展開を行っております。今世紀末には私どもが運営しております空港全てで免税品の取り扱いを一括して「ワールド・デューティーフリー」が行うことになるでしょう。他の企業が作ったもの以外に私どもの企業が作った商品も直接販売をすることにしております。また私どもはアメリカで最大の免税店系列会社を所有運営しております。その他に機内での免税品の販売も一括して手掛けておりまして、運航中の飛行機内にスチュワーデスが免税品を乗せて運ぶ携帯の手押し車がありますが、一つがユニットになっていてそれを2千個、常時飛行機の中において免税品を売るという体制を取っております。 BAAで働くということ さて、BAAで働くということは、どういうことなのでしょうか。私どもがどういうことをするのかお話すると、お分かり頂けると思いますが、私どもといたしましては、正しい方向に会社が行っているということをいつもチェックする必要があると考えております。BAAは、この分野では先端を行っている企業であるということ、それから従業員は8千人を超えておりまして民営化以来、生産性も上がっております。収益率も40%以上上がっております。そして従業員のほとんどが自社株を所有しております。私どもといたしましては、空港運営会社として世界で最も成功を収めている会社にするということが使命であるということを、従業員にも私自身にもいつも言って聞かせております。それでは、そういうことを聞く人達はどのように感じているのでしょうか。海外の事業計画といたしましては、まず最初に私どもが手掛けたのがピッツバーグ空港関連の事業でありました。その運営を私達が任されて以来、利用客は3倍に増えました。また、アメリカのインディアナポリスの場合は、インディアナ空港で業務を展開しております航空会社がコスト減につながるような改革を行ったということで、その業務に対して私どもは収益を得ることができました。イタリア南部のナポリ空港では、その空港の株の70%を私どもは所有しております。ヨーロッパ大陸で最初に空港の民営化を手掛けた空港の一つであります。また、オーストラリアのメルボルン空港では50年間のリース契約を結んでおりまして、空港運営の改善に当たっております。 苫東における空港の可能性 それでは、その他に私どもの意見と致しまして、昨日のことですが苫東と新千歳空港に行って両地域を隈なく見て回る機会がありました。ほとんどの空港が直面する大きな問題の一つといたしましては、住民に対する騒音公害と言われるものです。それから近隣の主要都市の規模を鑑みて、その施設の収容能力の問題というものも考えられます。それでは苫東の場合はどうでしょうか。苫東で空港を建設するという企画は実際に可能なのでしょうか。私どもの経験から一つ分かっていることがあります。それは、ある程度の利用客を集めることができれば、それを超えますと自然にその空港はそれなりの機能を果たし大きくなっていくということです。先ほども少し申し上げましたが、空港と申しますのは需要に応じてゆっくりと成長していくということであります。ですから、苫東を対象とした新空港の開発に掛かりましては、利用客を充分引き付けることができるかどうかということであります。その点に関して私どもが提案できますのは、新しい空港というのは既存の空港と協調して一緒に運営を行っていくということです。2番目といたしまして、日本の航空業界全体が日本における着陸料を含む空港使用料の問題点をどの程度熟視しているのかということであります。その計画事態、将来成功するかどうかということに関しましては、100%成功するという保証がつくようなフィージバルスタディをする必要はないでしょう。それよりもむしろ運航面の調査を充分行うということ、すなわち具体的にはどの程度利用客を掴めるかということであります。利用客を掴む空港とはどのような空港かということに関しまして少しお話しますと、これは空港産業のみならず全てのビジネスに当てはまる解決策であると考えますが、簡単なのが一番だということです。 |