平成11年3月3日
産学官協力特別シンポジウム基調講演

テーマ:「21世紀、試される北海道の担い手」
─いま、熟年世代が燃えている─

金子 勇氏(北海道大学文学部教授)

1・高齢社会の到来

 「21世紀、試される北海道の担い手」─いま、熟年世代が燃えている─というエキサイティングなタイトルは、事務局から頂戴したものです。私の仕事は燃えている人は、もっと燃えて、燃えていない人には火をつけようということです。火をつけるのは簡単ですが、人がどのような形で動き始めるかということを研究してきた経験を活かして話を組み立てたいと思います。まず、これから高齢社会がやって来るという話ですが、ご承知のように昨年の10月から本年の10月まで国連が決めた「国際高齢者年」によって、今、この関係のイベントはたくさん開かれています。世界的に見て、特に先進国では高齢化の動きが避けられないので、それではどのようなことを我々先進国に暮らす者として考えて行けば良いか、その傾向と対策を世界的に考えようというのがこの趣旨です。テーマは、「すべての世代のための社会をめざして」ということで、若い人も年を取った人も中年も合わせて交流できる社会、そして男女共に交流できる社会を世界的に追求して行くと、どのような姿が見えてくるのかということが大きな課題です。原則は、特に高齢者については自立・参加・ケア・自己実現・尊厳という5つのキーワードで作られています。内容的には、この内一番大きいのは高齢者であるが故の差別で、これをエイジズムと言います。肌色で差別する人種差別をレイシズム、性に基づく差別をセクシズムと言います。この3つは人類が持っている非常にやっかいな病気で、いろいろな処方箋は施されているのですがなかなか即効力がなく、依然として根深く人類を蝕んでいます。そういう認識の中で特に年齢に基づく差別(エイジズム)を止めようというのが一番大きな狙いです。その最たるものは、年を取ったら全ての人がボケたり寝たきりになったり介護を必要とするのだという謂れなき差別です。ここ10年くらいでようやく薄れて来たのですが、依然として年を取ったらこのようになると言う方が一般的に多くいます。しかし調べてみると時代や国を超えて治療・介護・援助が必要になるのは15%くらいであり、不思議なことに世界的に見ても変わりません。したがって残り85%は何ら問題がないのです。ただ年を取っただけで、きちんと自分でやって行ける存在であるということをもっとアピールすることが、このエイジズムを克服する上での一番大きな狙いです。本日は、この85%の普通にやって行ける高齢者と、15%に含まれる他人からの援助・介護・治療を必要とする存在があるという両方を頭に入れて頂いた上で、高齢社会の今後の姿を考えるきっかけを提供できればと願っています。

2・都市高齢社会の対策(長寿化と少子化対策)

 そのような高齢社会が進展してきた中で、日本全体もそうですが都市レベルでは二通りの大きな対策の柱があります。一つは長寿化への傾向に対してどのように立ち向かって行くかという長寿化対策です。これは来年4月から介護保険が立ち上がることによって、かなりの方向が見えて来ました。介護保険が持つ意義は裾野が広くて、ビジネスも含め日本社会の実に様々な部門が変化を始める、その追い風になるだろうと考えられます。しかし、もう一つ高齢社会を引き起こしている現象として少子化があります。少子化というのは子どもが少しずつ生まれにくくなったり、生まない人も増えて社会全体の構成がかなり変わり始めたということです。高齢化率は、100×高齢者数/総人口ですから、長寿化がいくら進んでも総人口がそれ以上に多くなれば高齢社会にはならないわけです。しかし日本も含めた先進国の現状は、長寿化はどんどん進んで高齢者が増える一方、総人口は頭打ちで、これは少子化による影響が非常に強くあります。したがって長寿化と少子化が同時進行することにより、高齢社会が急速に到来するということがわかります。対応策としては、先程話したように、介護保険によって長寿化に対しては方向性が見えて来ました。一方、少子化については今のところ「エンジェルプラン」と「男女協同参画社会作り」という二つの大きな処方箋が出されてはいますが、なかなか具体的に実を結んでいないというのが実状です。ですから皆様方が燃え始められるきっかけは、長寿化からでも良いし、ほとんど手付かずの少子化について、どのようなことがビジネスとしても可能であるかということからでも具体的に話を始めることができます。私が長く取り組んできたのは、この内の長寿化の方で、「高齢社会とあなた」(日本放送出版協会)という本を出版しましたが、今話したような長寿化を中心に少子化の話を入れてまとめたところです。
 話をもどして、少子化と小家族化により、今まで持っていた、家族の中で教育をする力や介護する力というものが弱くなるので、それを補う形でのビジネスチャンスはあります。今のところビジネスというよりは、ほとんど行政のサービスとして税金によって支えられているのですが、学校教育、社会教育を外して介護の問題だけに限定すると、まずは在宅福祉の3本柱という非常に日本で評価が高いホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイがあります。これは福祉や介護の専門家によって担われるので、基本的には有償です。しかし福祉や介護の専門家はそれほど多く日本にいませんから、高齢社会がもっと深刻になった時に、専門ではない人間も福祉に向けて何かするという仕組み作りが大事になってきます。それを私は地域福祉の3本柱と表現して、ボランティア活動、緊急通報システム、町内会活動を上げています。これはそれほど大変ではないし、資格が必要でもないので、「どれか一つでも始めてみてはどうですか」ということをこれまでかなり申し上げてきました。それは町作りの今の時代のコンセプトであるアメニティという快適性のある町作りのためにも主体的に係る場合の条件になります。アメニティという言葉は日本では長らく環境のアメニティ、もっと露骨に言えば歴史的な景観や風土や建物が残っていると、それは窮めて環境のアメニティを押し上げるという使い方をしてきた歴史があるのですが、それをもう少し膨らませると、環境だけではなくて我々が日常経験している人間関係の快適性ということが必要になってきます。実際にアメニティの語源を辿ってイギリスの都市計画の文献を探ると、この2つが同じウエイトで並べてあります。決して場所、環境、気候の快適性だけではないのです。日本にこれを紹介した人が、こちらに力点を置いて紹介し続けてきたので、2番目の人間関係、人の態度面のアメニティという考え方が乏しくなっているのですが実際は両方あります。ある程度インフラは整備されたので、これから高齢社会の中で私達が町や地域の中で快適な環境を目指すためには、2番目の人間関係、人の態度、要するにこれは「うきうきして、快活で、愛想がよい」という付き合いをどこで、どういう形で維持できるかということまでを含んで考えて行かなければならない時代になっているということを理解して頂きたいのです。そのためにも先程話した地域福祉の3本柱、高齢者に対して自分がどのような係りを持てるかということも一つのライフスタイルとして重要ではないかと思います。

3・地域社会が福祉・介護・生きがいの機会を与える

 その地域社会が熟年世代も含めて福祉や介護や生きがいの拠点になるという一方では特別養護老人ホームも老人保険施設も行政が努力してたくさん造っていますが、いかんせん、いくら造っても数が足りないのです。全員の人数が賄えないので基本的には在宅でやることになります。在宅の応援というのは、家だけではなく、その家を含む社会全体の環境をどう作り上げて行くかということになります。したがって、先ほど話したアメニティという考え方がそこに入ってきます。そのような地域社会の中で、特に社会教育、北海道では長寿社会振興財団や老人クラブの連合会というような似たようなところが、今、こぞって行っているのは生きがい対策です。生きがい対策というのは、先ほど話した85%の在宅で元気な高齢者向けだと言われますが、実は病気で入院している人も老健施設で介護を受けている人も合わせて生きがいが必要であるということです。生きがいというのは生きている限り、老人だけではなく中年の我々も中学生も必要なものです。
 ここから先は私がいくつかのところで調査をして、なるほどと思ったことをそのままお伝えします。生きがいについての概念を詮索し始めると何時間たっても答えは見つからないのですが、ここでは「生きる喜び」と操作的に考えて調べていくと面白いことがわかりました。あなたの生きがいは何ですかと聞いて、それをまとめて見ると、高校入試で出題されない音楽、美術、保健体育、技術家庭から特に高齢者は生きがいを探しているということがわかります。この4つは高校入試に出題されないために中学生もそれほど熱心にやりません。しかし、これらのどこかを中学校の時にやっておくと、40の声を聞いた頃にこういう世界のどこかに自分を持っていくことができます。60になって生きがいを見つけるというのは遅いのですが、例えば楽譜を少し読める、油絵を書いた経験がある、料理や手芸をしたことがあることによって、自分なりの生きがいの活動のテーマが見えてくるのです。これが私がここ1年間くらい痛感している調査の結果です。それをもう少し具体的に調べ直すと、社会参加、家族交流、友人交際、趣味娯楽という4つにまとめられます。このうち趣味娯楽が高校入試に出題されない科目から得られているという話しになります。こういうものを応援していくことが、これからのビジネスチャンスを広げるのだという話につながっていきます。

4・福祉の企業化、シルバービジネスの分野

 介護保健が始まることによって福祉というものが各方面から注目される中で、最も大きいのは企業化あるいはシルバービジネスという、これまでほとんど手付かずであった分野が徐々に広がってくるのではないかということです。これは現在、在宅福祉サービスで行われているような、たくさんの行政主導のメニューと同時に、その隙間産業的なもので例えば移送サービスなどがビジネス化する方向にあります。行政が行っているサービスでも徐々に企業として取り込める、あるいは応用する範囲が広がってくると考えられます。それを細かく見ると、一番中心になる部分に介護保険によって直接作り上げられるビジネス分野、それを取り巻く介護関連市場、もっと広い意味では毎年0、6%ずつ高齢化率が上昇していますから、高齢化が20%になり25%になるということは確実に予測できるので、介護保険とは直接関係のない介護関連あるいは高齢者市場の全てが右上がりで広がってきます。そういう中で皆さんが燃え上がるきっかけとして、何をどのように考えておけば良いかということを残りの時間でお話したいと思います。

5・リーダーシップのPM理論《PM、Pm、pM、pm》

 私達の専門としている社会学の分野と心理学を合わせた社会心理学という分野がありますが、その両方にリーダーシップ論があります。このリーダーシップ論は、よくナポレオン型や徳川家康型、西郷隆盛型といわれるものではなく、もっと科学的にリーダーシップを測定する分野としてPM理論というものがあります。このPM理論は外国産の理論ではなく日本人の独創的な理論です。PとMをリーダーシップの中心的な概念として位置付けます。Pはperformanceで実行力です。実行力に欠けるとリーダーシップを発揮することは非常に難しい。人を引っ張っていく力がなければリーダーになれないということは、皆さんの日常的な経験でも良くおわかりだと思います。言葉としては、率先的行動力、垂範性(手本になれるかどうか)、管理する力、規律を指導できるか、物作りを中心に監督ができるかということを合わせてperformanceといいます。これが強ければP、弱ければpで表わすという約束事があります。そして分析するとPM Pm pM pmの4通りに分けられます。実際は、pmではリーダーになれません。しかし多くの場合、PMでもありません。日本も含めて、非常に実行力に豊んで、かつ統合力にも豊んでいるというリーダーは殆どいません。M(maintenance)は統合する力ですが、それは配慮的行動ができる、公平である、会社や組織が維持できるように心を配る、緊張を緩和する力がある、従業員の身になって現場で考えるということで、Pとはベクトルの方向が違うところを向いています。これを組み合わせて我々はリーダーシップの在り方を考えて来たのですが、多くの場合、Pが強い人とMが強い人がいて、PもMも強い人はいないということですから、これから皆さんが何か始めようとしていらっしゃるとすると、自分はPが強いのかMが強いのか、自問自答されると直ぐわかります。自分が仕掛けようと思った方はPが強いわけですが、それだけでは組織が立ち上がっても、うまく進みません。必ず両方いります。したがって集団指導体制をとることがベターです。その集団指導体制をとるに当たり、いくつかのノウハウがありますので後でご紹介します。例えば私が直接関係している分野に社会教育における地域リーダー養成講座があります。これは15年ほど前から道庁や市町村の社会教育課で公開講座の名のもとに延々と行って来ました。また10年ほど前に厚生省の指導で全国の都道府県に長寿社会振興財団あるいは長寿社会開発センターを外郭団体に創りました。そこは1年間に3億円くらいで運営していますがこれは都道府県がお金を出して、まる抱えで組織を支えています。この組織が行ってきたことは、例えばシニアリーダー養成講座あるいは老人大学リーダー養成講座です。いわばリーダーは養成されるものだと考えて行政がやってきた歴史があります。しかし私は、それに対してはやや懐疑的です。例えばエア・ドゥの立ち上げを見ても、最初に声を出された方々はリーダー養成講座などを受けられたことは、まずありません。そういうものを受けたから自動的にリーダーになれるのであれば話は簡単すぎて涙が出るくらいですが、そうではない。リーダーとは、いろいろな状況の中で自然発生的に「この指とまれ」と言い出すことが圧倒的に多いわけです。しかし行政は相も変わらず高齢者リーダー養成講座を10年間延々とやり続けてきて、今その見直し作業を私がやっているわけですが、こういう質問をしました。「10年間もリーダーの養成講座をやってきたからには、さぞ全ての都道府県にシニアリーダーがいるんでしょうね」と。すると事務局の方は「それは良くわからない」。つまり何のフォローもしていないわけです。講座はやったけれども、その人達がその後何をどうやっているかということを一切してこなかったのです。それは多いに反省した方が良いということで、その点検作業をしてもらわなければならないのではないか。リーダー養成講座を受けた人がどういう活動をして、どのような成果を出しているかをきちんと調べるということは、口で言うことは簡単ですがノウハウが必要なので、例えばこういうこともノウハウを持っている人にとってはビジネスのチャンスになります。そういうことを隙間産業としてでも学んでもらうと有難いと思います。

6・福祉ベンチャー企業の可能性

 本日のメインタイトルである、北海道の担い手がどのように燃えて行けば良いのかということは、私の回答の一つとして福祉ベンチャー企業があります。わざわざ福祉と付けたのは、先ほど申し上げたような高齢社会が長寿化と少子化を同時進行させて目の前にあるので、それに向けての燃え上がり方をこのような切り口で考え直した方が良いという若干よけいなお世話であります。これをベンチャー企業論と合わせて見ると、1から5までのことを考えておかれた方が良いのではないかと思います。まず、1の新規事業と創業です。福祉のベンチャー企業を始めるにあって、「この指とまれ」と言う人はPの実行力に豊む人が多いです。最初はもちろんこれがなければいけないのですが、それだけではいけないということは先ほど申し上げた通りです。Mがどうしても必要で、この支える存在は友人、家族、親戚等だれでも良いのですがとにかく複数で始める。集団指導体制が良いというのはそういう意味です。
 ここで、中小企業庁がインターネットで出している調査「創業者の創業時の年齢」を見て頂くと、ベンチャーを始めた人が徐々に高齢化してきていることがわかります。一番新しい平成3年以降を見て頂くと、50歳以上で始めた人が37%います。40歳以上も合わせると、70%を超えます。何が一番良いかと言うと、中年以降は自分の仲間が結構多いのです。つまり自分を磁石とすると、その磁石にくっついてくれる友人、家族、親戚が徐々に財産として増えていて、そういう人達が始めているのです。決して、創業者の中高齢化が進んでいるというのはマズイことではありません。むしろ今は時代の動きに適合していると言った方が良いだろうと思います。
 2番目は、人材は同業種異業種を問わず、ノウハウをもったスピンアウト組から得られるということです。スピンアウト組というのは、ある組織や会社からはじき出された人、あるいは主体的に自分から出ていった人です。そういう人が必ずいて、これは同業種でも異業種でも良いわけですが、そういうところに狙いをつけて人材を求める。私の経験では、地域リーダー養成講座やシニアリーダー養成講座を一週間受けたから役に立つ人材になれるかというと、そうではないだろうと思います。調べて見ようと思いますが、スピンアウト組が結構いて、そこに旨く数量付けができれば引っ張ってこれるのです。
 3番目は、理想としては単独ではなかなか難しいので、異業種仲間(友人と親族)と一緒に創業する。これは社会学の分野で社会運動論がありますが、社会運動を始めるに当たって(企業を立ち上げるのも一つの社会運動と理解すると)友人や親戚がまわりにいることによってスクラムが組めます。これを連帯と言います。連帯が強いほど旨く行きます。その理由の一つは、どうしても外部からのいろいろな資源、お金はもちろんのこと情報や知恵など様々な資源を引っ張りこむには一人では無理で複数が良いのですが、それも友達か親戚の人と一緒の方が引っ張りこみやすいということは学問的に証明済みです。その理由は、多方面へのコミュニケーション回路が仲間を通して確保されるので、それを持っている人がたくさん集まった方が良いのです。コミュニケーションは一方向ではないのですが、それを3つ持っているよりは5つあった方が良い。それが5人集まれば25になるといった話です。そして、異業種でこういう立ち上げをすると、逃げ道がないために背水の陣でがんばるということになります。そして先ほどから言っているように、P機能とM機能のバランスがとれます。実行力がある人ばかりでもいけないし、統合力がある人ばかりでもうまくいきませんから両方あった方が良いということです。この連帯モデルで説明すると非常にきれいにわかります。エア・ドゥの話もこれにぴったりくるのではないかと思います。4番目の創業間もない企業への投資における問題点。これは主としてお金の問題ですが、企業の詳細な情報が公開されない、企業を評価するのが難しい等の問題点が上げられていますが大事なことは外部からの支援も含めてプロセスは3つあります。一つは福祉のサービスでも良いのですが、新しい商品を生産・開発する時に応援してもらうという支援策があります。それについては自信があるというところもありますが、実際に生産方式を導入する時に応援してもらう方が良いという場合もあります。それから一村一品運動でかなり反省点として共有されていることですが、多くの場合物を作ることが優先されて、売るというのは2次的な行為であると誤解していた向きが非常にあって、10年経った今、一村一品運動を見直す場合の一つの見方になっています。つまり作ることと売ることは同じ価値があるのです。しかし作っている現場に行くと、作ることには熱心だけれども、良い物は必ず売れるに違いないということで、作るほど売る努力は熱心ではありませんでした。そのことによって、せっかくの商品が我々に届かない。したがって販売面と、買い手からすると購入面に関して応援してもらうという、この3つのどれが良いのかということは立ち上げた業種によってそれぞれ違ってきます。したがって燃え上がるためには一番効果的に火をつけてもらうところを考えておくということが必要になります。
 5番目は、弱いきずなの強さ、強いきずなの弱さです。これは一見反対だろうと思われることが多いのですが、これも私達の分野でほとんど証明されています。例えば失業した時に、再就職したいということになると再就職のチャンスを誰が持ってきてくれるか。日本の場合はハローワークに行く等の公的プロセスがありますが、個人的な関係で紹介を受けることも多いわけです。弱いきずなというのは、ちょっとした関係、かつての取引き相手というくらいの関係です。強いきずなというのは、家族、親戚、姻戚というものです。弱いきずなの方が圧倒的に再就職のチャンスを保証してくれるというのは、弱いきずなというのは一人の人間にとってたくさんあるのです。そういうところに常時、再就職のお願いをすることによって情報が入ってくるということになります。先ほどの言葉で言うと、多方面へのコミュニケーションの回路をたくさん持っていることによって、そこから良い話が舞い込んでくる。したがってただ親戚のおじさんに頼んだから旨く行くというのではなく、いろいろな弱いきずなをフルに活用したら本人に一番良い応援が寄せられるということは、証明されたこととして社会の法則として我々は利用しているところがあります。国家、自治体、公的機関ももちろん大きな外部資源です。同時に友人、取引先、民間企業も大きな資源です。エア・ドゥの場合もこういう関係からいろいろな応援が寄せられているということが、今、順調に飛んでいるということになっているのではないかと思います。コミュニケーション回路を広げる努力をすることによって、外部からの応援を受けることができるようになるということです。
 最後に、そういう応援を動機づけるものは一体何か。それはたくさんあるようで、4つしかありません。一つは応援をすることによって儲かるかどうかという話です。株を買う、資本金の増資に応じるということも含めてたくさんの経済的な誘因があります。しかし福祉のベンチャーを考えて行く上では単に適正な利潤が入ってくるというだけの動機づけでは弱くて、残りの3つをすることによって社会的評価が高くなります。企業としても高くなるし、本人もそれによって良い仕事をしているという感覚になります。儲かることはもちろんですが、良い仕事かどうかという評価の軸は特に高齢社会になった時に大きくなるはずです。そして、応援をすることによって生きる喜びを持つ方もいるわけで、そういう面での心理的誘因があります。この3つは皆さん方の中に必ずあるものです。もう1つ道徳的な誘因というのは、こうすべきであるという話になった時には反発を感じる人もいるし、そうだそうだと言う人もいると思います。建て前的な話に乗りやすい人と、そうではないという人もいますが、しかし道徳的な誘因も無視できないということです。
 今日は、燃え上がるために我々熟年の世代が高齢社会という長寿化と少子化が同時進行する時代の中で、何をどう考え、どこをどうするのかということのヒントを圧縮してお話ししました。


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