航空・空港問題シンポジウム

基調講演1 「航空自由化の進展と空港大改革」

杉浦 一機氏(航空アナリスト)

   

 

 はじめに

 ご紹介いただきましたように、今、航空問題が日本で大変大きく転換しております。私は、現在、東京で「日本で中型機の国産ジェット旅客機を作ろうではないか」という動きのお手伝いをやっています。これは石原都知事が、かなり頑張っています。本来、東京都がやるべき事ではないのですが、「国がやらないから」という事で、いろいろなメンバーを集めて、100人乗りくらいのジェット旅客機を日本を中心にアジアの国と一緒に作ろうと、経済産業省等をつついているところです。記事ではご覧になっているかと思いますが、30人乗りのジェット旅客機の開発が既に決まっています。しかし石原知事は、「これだけでは経済波及効果は非常に小さいので、日本の国力に合わせた100人乗りを作りたい」と動いております。

また、横田基地の共有化の問題も、小泉首相とブッシュ大統領の会談で、両国検討することが決まりました。このような点も含め、いろいろな形で航空問題が大きく動いているということです。

 今日は特に、今、世界の航空自由化がどのように進んでいるかというお話をしたいと思います。なぜかと言いますと、日本の航空自由化も欧米の自由化の軌跡を追う形で進んでいます。ある面では、世界の自由化を学んで行けば、これから日本がどう動いて行くか、という事が見えてくるからです。もう一つは、やはり「空港問題」と「航空問題」は密接な関係がありまして、世界の中でも「航空自由化」の次が「空港民営化」になっています。イギリスでは更に管制まで民営化されていくというような事で、航空分野での民営の領域がどんどん広がっているという傾向にあります。

 

 1.世界の空を一変させている「航空自由化」

 まず、航空自由化が世界の空を一変させて来ました。1978年にアメリカからスタートして、日本は世界の主要国で最後の2000年にスタートしました。その結果、世界で航空運賃が大きく下がり、人々は気軽に航空旅行をするようになりました。アメリカでは、25年間くらいの間に航空旅客は約3倍に膨れ上がり、各空港はパンク状態になりました。2001年のテロで、一時的に減少しましたが、いずれにしても航空旅客が大変な勢いで増えて来たということは自由化の一つの結果です。

日本は始まったばかりで、メディアから「今回はどのように見たら良いのでしょうか」とコメントを求められるのですが、私は「まだ第2段階に入ったばかりですよ」と申し上げています。これからいろいろ試行錯誤を重ねながら、日本に合った航空自由化を皆さんと一緒に考えていくべき問題なのです。重要なのは「どうしたら日本の航空自由化の理想像ができるか」という事を、エアラインだけではなく、航空旅客や国民も含めて一緒になって考えて頂きたいし、行動を取って頂きたいと思います。ですから、航空自由化は航空業界だけの問題ではなく、国民全体の問題であるということを申し上げたいのです。

 

 2.「航空自由化」の次は「空港民営化」

 世界の流れからすると、先程申しましたように、「航空自由化」の次は「空港民営化」という事で、世界的に広まっています。私は、これは時間の問題で、日本全体の空港はぞくぞくと民営化するだろうという認識を先程までしていました。しかし打ち合わせの時に渡邊先生から、「いや、そんなに簡単なものではない」「あるいは民営化だけがベストではないかも知れない」というお話しを伺いまして、その辺、後の講演が楽しみだなと思っています。私の認識としては、「空港が民営化されることによって、航空会社が活性化し、また空港が活性化していく」ということで、航空自由化にとって空港の民営化は重要な要素だと思っております。

 

 3.不安定な時代に突入した航空ビジネス

 ただ一方、航空業界自体は大変な状況になっております。今までのような右肩上がりではなく、来年の景気がどうなるか分からない、という波乱万丈なビジネスになって来たという事がはっきりして来ました。

一つはジャンボジェットが登場して以来、航空業界はたくさんの旅客を運ばなければいけなくなったので、航空ビジネスの体質が変わって来ました。航空会社は大量の旅客を運ぶために、運賃をディスカウントして「観光客」をたくさん呼び込むようにしました。これによって、見かけの旅客は増えたのですが、観光客は景気の変動によって大きく増減します。ですから観光旅客は航空会社にとって、歓迎すべき需要ですが、不安定要因です。

もう一つは、ビジネスの変化が航空会社のビジネス環境を左右しているのです。20年前であれば海外出張に行くというのは、会社の中でもエリート中のエリートで、その方々はビジネスクラスあたりに乗って、たくさんの外貨を持って旅行に行けたわけです。今やそういうビジネス客だけではありません。むしろ一般のビジネスにも航空会社が使われるようになっています。すると、一時は裏マーケットと言われた「格安運賃」を、企業が積極的に使っていかないとコスト的に成り立たない状況になっています。そして、儲かっている時にはビジネスクラスに乗っていても、儲からなくなると直ぐにエコノミーに切り替えるなど、格安運賃に切り替えるという企業が多くなっています。航空会社では、景気が良い時にはお客を断るくらい満席になり、値段の高い座席から埋まっていくという状況なのですが、一担景気が悪くなると中々お客が集まらないという事の繰り返しになり、景気の変動を受けやすいビジネスになって来ました。

もう一つは、昔は考えられなかったことですが、予想外の出来事で経営を大きく左右されるようになりました。2001年の航空テロがありまして、我々もビックリしていたわけですが、今度はSARSが発生して、これまた航空会社に大変大きな影響を与えました。SARSは世界全体では1割くらいの変化だったのですが、アジア太平洋地域については45%くらい旅客が減りました。ですから航空会社の投資というのは、3年後を見て徐々にやって行くということが中々出来にくくなって来たということで、変化にいかに早く臨機応変に対応できる体制を作るか、ということが重要な課題になって来ています。

皆さんのイメージの中にある航空会社は、「非常に質の良いお客さんを相手にした、よく儲かる会社」というイメージがあるかも知れませんが、今や航空会社はいくら大手でも明日はどうなるか分からないという状況です。アメリカでは続々と航空会社が破綻していますし、ヨーロッパでも破綻しています。日本でも皆さんがよくご存知の航空会社が来年には破綻するかも知れないという状況になって来ているわけですから、エアラインの経営は非常に厳しいと思います。

そこで、アジアの主要空港では、このようなエアラインの窮状を救うために着陸料を一時的に値下げしています。例えばシンガポールのチャンギ空港では、テロ以降、着陸料を15%カットしていたのですが、それに加えてSARSの影響で30%カットし、テナント料も10%減らしました。マレーシアのクアラルンプールの空港は、着陸料、駐機料ともに50%カットするという対応を取っています。一方、IATA(国際航空旅客協会)が「日本も是非、世界一高い着陸料をこの期間だけでも下げてくれ」と要求して来たのですが、日本からはその返事すら返って来なかったということで、IATAの事務局はかなり頭にきたようです。私から言わせれば、空港の経営感覚が、アジアの空港に比べて鈍いのではないかと思うのです。つまりアジアの空港は、航空会社の経営をかなり敏感に感じながら経営をしていて、自分の課題としてとらえているのですが、日本の空港の場合は、「まだ他人事」という感覚が強く、自分の空港の経営しか考えないということではないかと思います。

 

T・JAL−JAS統合で第二段階へ

次に、今日の一番大きなテーマですが、JAL−JAS統合で日本の航空はどうなったかという事です。「自由化」に次いで大きな変革という事で、私は「第二段階」と言っています。実は統合によって、考えていた以上に大きな影響が出ており、もしかすると日本の空は激変する可能性があると言えます。

 

1.メジャーが存続を懸けて激突

一つは、JALとANAが存続を懸けた戦いになって来たということです。今までも、お互いに競争していたのですが、いよいよ本当の真剣勝負になって、お互いに相手を倒すまで競争が止まらないという、大変な状況になっているのです。

実は先月(7月)から航空運賃が上がったのですが、(上がったというのは不正確で、正確に言えば昨年10月に値下げした分が元に戻ったということです)お互いの戦いが行き過ぎで、自分の首を絞めてしまった。そこで、なりふりかまわず航空運賃を元に戻したというのが実情です。それがご存知のように国交省との間で、すんなり行かなかったものですから、当初4月からの予定が3ヶ月ずれて、航空会社の経営が大変な状況になっております。

先日、第一四半期の結論が出たのですが、ANAが420億円の減収です。本来は今年度一年で営業利益がマイナス26億円と、赤字は覚悟していたのですが、それが第一四半期だけで287億円の赤字になりました。経常損益は、通期で172億円の予定が、第一四半期だけで2倍の274億円です。JALも同様で、通期で220億円覚悟していたのですが、既に769億円の営業損益が発生しています。経常損益では220億円の損益を覚悟していたのですが、772億円の赤字ということで大変な状況になっています。

現在、大手航空会社の経営は、上半期に儲けておいて、下半期の赤字をなるべく減らしてトントンにしたいとの状況なので、この夏休みにどれだけ儲けられるかということが極めて重大な問題になっています。我々利用者としては高い運賃になってしまうのですが、航空会社としては会社が潰れるかどうかという状況になっているのです。

 

2.予想以上に強くなったJAL

 次に、JALが予想以上に強くなったという事があります。換言すれば、予想以上にANAが弱くなってしまったのです。ご存知のように、これまでJALは国際線で儲けて、国内線はトントンでいけば御の字という形で企業経営をして来ました。ところがANAの方は、86年に国際線に出て以来、まだ全く黒字を計上したことがありません。2001年にはプラスマイナスゼロにする予定を立てていたのですが、テロの影響でとんでもない事になり、2001年の国際線は500億円の大赤字になってしまったのです。将来の会社を考えると、国際線を広げることがANAの規模を大きくしますから、国際線をなんとかゼロに持っていって、黒字の国内線で埋めたいと考えていました。つまりANAにとって、国内線の黒字というのは生命線だったのです。

ところが4月から国内線のネットワークで、ついにJALグループがANAを上回りました。去年まで国内線のシェアは3社で見れば、ANAが50%、JALとJASが25%くらいずつで「12弱」だったのです。利益優先に転換したANAは、事業規模を縮小させたため、今夏の運行ダイヤを見ると、路線数、便数でJALが上回ってしまったのです。つまり国内線でもANAは、ついに二番手になったという事なのです。国内線で黒字を出さないと、大変なことになります。ところが、第一四半期が先程のような実績です。

さらに、国際線では、スター・アライアンスへの加入が、予想ほど貢献していない。スター・アライアンスの中核であるユナイテッドが破綻して、エアカナダが倒産して、オーストラリアのアンセット航空も倒産してしまったという事で、スター・アライアンス自体がガタガタになっている状況です。そこでANAは、これから大きな増収を期待できないので、国内線でいろいろケチケチ運動をして経費を削減し、また航空運賃を工夫して、売上げを増やさなければ、ANAの存続そのものが無いという状況に来ているのです。

 

 3.グループ化で対抗

 そこでANAは、非系列の会社を仲間に入れながらグループで対抗しようとしています。今まで中立だったフェアリンクという仙台の会社や、中日本エアラインとも提携して、JALの包囲網を着々と作っています。エア・ドゥとの提携もその一環という事になります。しかし、全体から見るとあまり大きな貢献にはなっていません。

 

 U・メジャー同士の対決から、「メジャー」対「格安」の対決になるか

 

1.欧米では「メジャー」対「格安」の戦いに

 実は欧米の航空業界では、既に「メジャー」対「メジャー」の対決よりも、「メジャー」対「格安」の対決の方が重大な局面を迎えているのです。例えば米国では、同時多発テロ以前はユナイテッドとアメリカンが雌雄を決する双璧でした。世界最大の航空会社と2番目の航空会社がアメリカンとユナイテッドだったのです。ところが同時多発テロ以降、特に大手の旅客が激減し、経営が悪化したため、昨年から両方とも破綻の線上にあります。ユナイテッドは既に破綻して、日本でいう会社更生法が適用されています。この1年の間に立ち直るかどうかという状況です。アメリカンも同様な状況で、しょっちゅう「アメリカンは危機を回避できないのではないか」という報道が流れたのでご存知だと思いますが、パイロットの賃金を上げるのを止めてもらったり、何とかハードルを一つ一つ越えて生き伸びている状況です。そこでアメリカ政府は911日のテロ以降、150億ドル(1,700億円位)を航空業界に補助したのです。しかしそれでも足りないという事で、更に先日26億ドルつぎ込んで、大手が倒れないように何とか保っているという状況です。したがって、SARSに続いて何かが起これば、アメリカの航空会社は壊滅的なことになります。世界最大だったパンナムは、既に遠い昔に倒れ、TWAという国際線の会社もアメリカンに吸収されたのですが、その残ったアメリカンとユナイテッド自体が、ほぼ破綻同然になっているのです。

 一方、アメリカで伸びているのは、サウスウエストとジェットブルーという会社です。格安で伸びてきた会社なのですが、こういう会社は非常に好調な成績を収めています。旅客が運賃に敏感になったこと、保安検査が厳しくなったことで、大手の利用する大空港の混雑が一層ひどくなり、旅客が格安社に流れたためです。ヨーロッパも同様です。日本では格安社のシェアは1%位で、まだまだ比率からすると目じゃないという感じなのですが、欧米では大変な存在になっています。米国では16.4%が格安社のシェアです。サウスウエストは昨年ついに乗客数でナンバーワンになりました。まだ売上げでは、短い路線が多いのでトップではありませんが、人数ではトップです。カナダでは15.1%、EUでは11.0%、オーストラリアでは12.4%が格安社のシェアになっているという事で、どんどん伸びています。しかも驚くのは、メジャーよりも高い収益性があるということなのです。例えばアメリカの航空会社の中で、昨年黒字になったのは格安社だけです。大手は皆赤字なのですが、サウスウエストやジェットブルーという会社は好成績を残しています。

 

2.好調なのは独自のビジネスモデルを作り上げた企業

 しかし、格安社だからといって全部が良いかというと、そうではなくて、独自のビジネスモデルを作り上げた会社が伸びているのです。サウスウエストは、個人旅行客を中心に考えた航空会社です。非常に簡素化、単純化していて、クラスはエコノミーしかありません。またハブ空港システムはとらないで、全部が折り返し運行しています。一日に2,840便を運行しますので、大変な便数になります。そして単に料金が安いというだけではなくて、乗ってみるとユーモアがたくさんあって楽しい。例えば乗って荷物棚を開けようとすると、スチュワーデスがその中に隠れていてお客を驚かすとか、あるいは「今日の登場客の中で靴下に穴の空いているお客さんには、無料チケットを差し上げます」というと、お客さんは皆履いている靴下を破って持っていくとか、パイロットはジョークにあふれたアナウンスをするとか、コストは掛けないのだけれども楽しい。そういうユーモア精神を社員の中に浸透させるための教育も行なわれています。そして日本では前近代的といわれている家族企業経営を徹底していて、年中社員パーティーをやっています。会長も社員の誕生日にはメッセージカードを送ったり、社員の家族が病気であればお見舞い状を送ったりして、社内の連帯感を高めているのです。

一番違うのは、アメリカ企業は縦割りで自分の仕事以外は手伝わない、という考えが強いのですが、皆でお互いに助け合う。会長といえども空いている時には空港へ行ってチェックイン業務を手伝います。車のF1レースで、ピットインの時にワッと皆で燃料補給やタイヤ交換を一斉にやって6~7秒で車が戻って行きますが、それを見て会長が考えたということなのです。サウスウエストの飛行機は現在、標準で20分で引き返して行きます。日本の国内線の航空会社は、大手で50分を目安にしています。サウスウエストの場合は早ければ15分で折り返して行きます。そのためには到着する前からスポットに、いろいろな人達が集まって来て、着いた途端一斉にワッと取りかかるのです。それによってフライトできる本数が増えるのです。他社の飛行機が15便しか飛べないところを7便飛ぶことによって経費を安くするということをしています。そこで、いろいろなところが真似をするのですが、なかなか経営哲学までは浸透できません。日本ではJALの子会社でJALエキスプレスがアメリカへ学びに行って、運航の手法が身に付いたということです。

 ジェットブルーは2000年に創業したのですが、全く違うことをしています。ここはビジネス客を狙っているのですが、メジャーで高い運賃のところに集中して便数を投入し、2~3割安くする手法で急成長しています。エア・ドゥやスカイマークにもヒアリングに来て、日本での成功例や失敗例も全部聞いて行きました。彼らは「初期からお金をたくさん集めて、大規模に参入すれば参入余地は大いにある」という事を学んで、アメリカで航空ビジネスを始めたのです。日本では1機とか2機ですが、最初から82機の飛行機を仮発注し、2000年に19機の機材で参入しました。しかも、サウスウエストは郊外の小さな空港から出るのですが、ジェットブルーは、なんとニューヨークのケネディ空港をハブ空港にして、大変良い成績を上げています。

ジェットブルーのビジネスモデルは何かというと、IT技術のフル活用です。例えばパイロットがフライトのたびに運航統制室から受け取っていた数百ページに及ぶマニュアルを、持参のパソコンでダウンロードする。ダウンロードに要する時間は僅か12分です。あるいは予約システムですが、家庭の主婦を安く雇って、コンピューターを彼女達に貸すのです。彼女達はコンピューターを自宅へ持ち帰って、自分の空いている時間に予約を取ります。1件取れば幾らということですから、勤務時間も好きな時間に設定すれば良いということです。コンピューターの台数は多いのですが、家庭の主婦を安く雇えて、しかも事務所経費がかからないので、予約のコストを大幅に下げることが出来ます。ところが乗ってみると、豪華革張りシートで全席テレビが付いているし、座席の間隔も他社より広いので、ビジネスマンにしてみれば、経費は2~3割安くて乗り心地が良いわけですから、どんどんジェットブルーを利用する状況になっています。ですから、ジェットブルーは第1四半期(アメリカでは13月)に、収入で前年比63%アップ、利益34%アップ、搭乗率84%という大変驚異的な数字を残しています。

 ヨーロッパでも同様なことが起きています。ヨーロッパは安い着陸料の空港を拠点空港にしてコスト競争力を発揮しています。例えばロンドンであれば、ヒースローのような大空港ではないけれど、車で3040km行ったところに着陸料の安い空港があります。ヨーロッパの主要国では着陸料が自由化されています。不便な空港は、着陸料を安くして航空会社を引っ張りますから、そういう所を拠点空港にして、運賃を35割減にしています。お客さんは、「どうせ車で行くから、いいや」という事で格安社に行きます。

例えば、アイルランドにあるライアンエアーという会社は、100機以上の飛行機を運航していますが、欧州の中で一番利益率の高いエアラインになったのです。英国航空(BA)を含めて他の会社が汲々としている中で、ライアンエアーは今年3月の税引き後の利益が330億円の黒字です。前年比59%アップということで、今、飛行機をまとめて100機注文したりしています。イギリスでは、BAが安売りの航空会社でGOという会社を創ったのですが、体質に合わないということで他の会社へ高く売ったのです。ところがBAの体質は全く改善されなくて、赤字がどんどん貯まっていくということで、「GOを売るのではなくて、BAの方を売ったほうが良かったんじゃないか」というジョークがささやかれているほどです。こうした状況は世界中に波及しているわけですから、日本にも当然やって来るだろうと思います。

 

3.航空政策の転換により日本でも勢いづく格安社

 そこで、実は航空政策が大きく転換しました。2000年の航空自由化の後、私から言わせれば国土交通省は、「格安航空会社は育成しない」という方針だったのです。つまり参入障壁を決して改善しようとしなかった。例えば、搭乗橋をエア・ドゥは使えないとか、整備の会社は系列化されていて使えないとか、いろいろな問題があったのです。さんざん我々が言っても、国土交通省は「それは民間企業同士の問題だ」ということで、腰を上げなかったのです。事実上、国土交通省は、格安社が自然淘汰されて退場していくのを待っていたと言われても仕方ない政策を行なっていたのです。

ところが、JAL−JAS統合の時に、公取の方から、「競争が不十分なのは、国土交通省にもその一因があるのではないか」という指摘があって、大変なやりとりをしたのです。その結果、国土交通省は政策を180度転換して、昨年426日に「これからは格安社を積極的に育成します」という通達を出しました。

具体的に言いますと一つは、これまで発着枠は、羽田に限って言えば新規会社は余分に取れなかったのですが、大手から吸い上げる競争促進枠を格安社に優先配分するという大転換をしました。二つ目は空港施設の開放です。搭乗橋やカウンター、整備施設などを格安社にも使えるようにしようという事で、現在エア・ドゥは羽田でもかなりの比率で搭乗橋が使えるようになりましたし、千歳では、ほぼ100%使えるようになりました。三つ目は、運賃のマッチングの禁止です。それまで大手は格安社が低運賃を打ち出すと、そのエアラインを狙い撃ちする形で、格安社と並びの値段を出して来ました。これにも公取からクレームが付いて、「やめなさい」という事になったのです。

その結果、格安社の新規路線が増えて来ました。一番早かったのは、スカイマークが4月から、ANAからバトンを受け取るような形で、東京−青森線と東京−福島線に参入しています。スカイマークはこれで4本目の線を運航開始しています。エア・ドゥが718日から旭川に入って来られたのも、羽田の発着枠が取れたからなのです。また、宮崎にあるスカイネットアジアが、これまで羽田−宮崎間を運航していたのですが、82日から熊本−羽田に参入しました。残念ながら沖縄のレキオス航空は、資金が集まらず、事業計画を中断しています。

 

4.幹線、準幹線を格安社にとられる日本のメジャー

 日本の格安社は、エアラインにとって儲かる幹線に集中して入って来る、という特徴があります。ですから、既存の大手航空会社はなかなか儲からなくなっています。

 

5.新たな段階を迎えているエア・ドゥ

やはり北海道ですからエア・ドゥに関して一言申し上げたいと思います。ANAとの提携により存続ができたという事については賛否両論があると思いますが、結果的には、これによってエア・ドゥの再建にメドが立ってきました。現在、半分の座席をANAが買い上げるので、エア・ドゥとしては経営が安定しますし、旭川への就航ができたという事で、面的な広がりができました。

エア・ドゥに関しては、あまり触れたくないという方も、中にはいらっしゃるかも知れませんが、やはり、別の面から関係を重視した方が良いのではないかなと申し上げたいと思います。エア・ドゥは、資本はANAという中央の資本に買われてしまったわけですが、社員、また仕入れなどは北海道ベースで行なっているという事実です。企業活動としては、北海道への貢献がさらに大きくなるだろうと思いますので、資本だけが道外になったからと言って、北海道の翼でなくなったというのは言いすぎだと思います。

一つの例としては、トヨタ自動車はアメリカで年間150万台造れる能力の設備を整えています。日本の資本ではありますが、アメリカの中でそれだけの雇用を確保し、現地で税金を払っている。逆にアメリカの製造業は殆ど国内で製造現場を持っていませんから、資本はアメリカでも、実際の経済活動は全部アジアに出ている。それでも本当にアメリカ企業と言えるのか。むしろ、日本のトヨタは資本を日本から持って行っているけれども、生産現場はアメリカにあって、税金もアメリカに納め、雇用もアメリカ人を雇っているという事になれば、そちらの方がアメリカ経済に対する貢献度は高いのではないかという気がするのです。つまり言いたいのは、エア・ドゥの今後の展開によって、北海道経済に対して実際面で大きな貢献をしていくのではないかという事です。ですから、温かい目でもう一度見てやって頂きたいという気がします。

ただ残念なのは、エア・ドゥの場合には、独自のビジネスモデルが見つかっていません。私はそれが最大の問題であると思います。アメリカやヨーロッパの企業は、先程申し上げた形でやっています。国内企業はどうかというと、例えば規模は小さいのですが、スカイマークでは、スカイマークの半券を持っていけばホテル代が安くなるとか、地元の企業といろいろな形でタイアップしています。しかも乾いた雑巾を、もう一度絞るというようなコストダウンを図っています。ANAの人が社内に入ってみたら、雑巾を充分に絞っていない、とリストラの余地が多く残っていた。世界中を探しても、メジャーの会社から格安航空会社がコスト面で指導を受けたというのは、初めての例だと思うのです。もう一つ言わせて頂ければ、世界の航空会社は戦って戦って、格安航空会社の地位を何とか維持し、売上げを伸ばすという事をしているわけですが、エア・ドゥの場合は、あまり戦わずして地位を治められているという点では恵まれているのではないかなという気が致します。

また、スカイネットアジアは、「中規模の路線に最初からトップシェアの供給量を携えて参入する」という方針で臨んでいます。これも新しいビジネスモデルだと思います。

 

 V・日本でも活躍を始めた小型機

 次に、日本の中で、これから小型機を使った「多頻度運航」が主流になって来るということを申し上げたいと思います。

 

1.大型機による低頻度運航から小型機による多頻度運航へ

これまでは、「大型機による頻度の少ない運航」が日本の大手航空会社の体制だったのですが、「小型機による多頻度運航」が増えて来ます。欧米では既に潮流になっていますが、日本の場合の最大のネックは、空港のキャパシティだったのです。多くの便数を受け入れられないため、便数を増やさずに機材を大型化したのです。サウスウエストの場合は、機材を大型化せず、便数をドンドン増やします。ダラス−ヒューストン間は、140便の飛行機が飛んでいます。ダイヤを見ないで空港へ行っても、だいたいサウスウエストには乗れるという状況になっています。

スイスにクロスウエアという会社がありますが、この会社は15便までは、便数を増やすと、それ以上にお客さんが増えて来るという法則を発見したのです。つまり、2便の時よりも3便増やせば、お客は5割増えるのではなくて、67割増えるという事です。便数を増やすのは、利用する側にも大きなメリットがあります。具体的にこれを実績で示したところがあります。日本では中日本エアラインの名古屋−松山線があります。ここはANAが166人乗りのエアバスを11便運航していたのですが、採算が合わなくて昨年3月に撤退しました。4月から中日本エアラインが50人乗りの飛行機を13便飛ばしたのです。座席数でいえば、166150ですからマイナスなのですが、利用は好調で、最大5便まで増やしています。1年間でお客さんは17.6%増えているという事です。多少の補助金を出しても、お客さんはわざわざ飛行機を選びません。しかし、頻繁に飛行機が飛んでいれば、乗りたいなという事になるわけです。

さらに、ドイツのルフトハンザ航空のフランクフルト−ミュンヘン線は、日本の東京−大阪間のような大幹線で、日本の場合はほとんど超大型機だけを使用していますが、ここは、こまめに飛行機を変えています。早朝や深夜に飛ぶ飛行機は、74人乗りの飛行機を入れて、日中のお客が多い時は300人乗りの飛行機を入れるなど、臨機応変に対応しています。こういう事が日本でも行なわれるだろうと思います。

 

2.注目を集める小型リージョナルジェットの活躍

 既に、この予兆は始まっています。2000年から小型リージョナルジェット機が、日本で活躍しているのです。千歳にも仙台からフェアリンクが飛んで来ていると思いますが、50人乗りという飛行機ながら、非常に快適です。 

もう一つのメリットは、これまでのプロペラ機よりも更に低い騒音であるという事です。丘珠空港や広島の西飛行場で、「騒音の高いジェット機の乗り入れはダメ」と、住民の方が猛反対をしていたのですが、実際にリージョナルジェットを飛ばして見たら、YS−11よりも騒音が小さい事がわかったので、乗り入れを認めるようになって来ました。伊丹でも、プロペラ機専用の発着枠があったのですが、それをリージョナルジェットに限っては認めるなど、かなり認識が改まって来ました。そして、この飛行機がどんどん増えています。わずか就航3年目ですが、仙台のフェアリンクは4機で6路線、広島のジェイエアは6機で14路線に就航していて、さらに広がっていく見通しです。

 

3.新しいコミューター航空成立の動き

 新規の航空会社でも、熊本の天草エアラインは地方自治体が主体になって、飛行機1機で運航を開始しましたが、日本で最高の搭乗率を確保して、初年度から単年度黒字が出たという大変なサクセス・ストーリーになっています。

二つ目は、北海道内でエアァ・シェンペクスという会社が、小型機で航空路線を開設しようとしています。当初、5月から函館−帯広線に就航しようとしていましたが、準備が遅れて来年早々になるのではないかと見られています。

そして10月に、日本で初めての「小型機を使った貨物航空」が誕生します。1機で貨物2.5トンしか運べないのですが、これを通常の旅客便が終わった後の深夜に羽田を発着すれば、貨物に合わせた新しい物流ができるのではないかと期待されます。小型プロペラ機を4機発注していて、10月から東京−長崎、東京−鹿児島の2路線が始まります。来年からは北海道へも飛ばす計画を立てています。この会社の社長は、有名なトヨタの大番頭でありました石田退三さんの孫になります。トヨタとJALが作った「乗員の養成学校」を整備会社にしていて、かなり目算があると思います。こういう会社が北海道へ入って来れば、新たな味方になるでしょう。

 

4.大型機の分野でも進む小型化

 日本には「飛行機に乗るならジャンボが良い」と、迷信のように思われている方が、まだたくさんいらっしゃるのですが、大型機の分野でも小型化が進んで来ているのです。400人を一度に運ぶ大型機よりも、250300人乗りの飛行機を国際線も直行便で飛ばした方が良いのではないか、という動きが特に欧米の間で進んでいます。つまり大西洋線であれば、ヨーロッパの中規模都市とアメリカの中規模都市を直接結ぶのです。今は欧米へ行くためには、東京か大阪へ出なければいけないというのが主流になっていますが、この考え方が日本にも導入されれば、例えば千歳からニューヨークやロサンゼルスへどんどん飛行機が出るという事になります。近い将来、そういう動きが日本にも取り入れられるでしょう。

 

5.米国で広がる「借り上げ機」

 米国では「借り上げ機」というのがあります。リゾート地のコンドミニアムのように、パイロットと飛行機を共同で借りて、自分の会社の飛行機として運用するのです。2001年のテロ以降、一般の飛行機を使うには空港の手続きなど時間がかかって大変だという事で、好きな時間に近い空港から飛行機を発着させて、企業の輸送に使おうというものです。これは日本でも、かなり増えて来るのではないかと思います。

 

 W・始まった空港の大改革(「航空自由化」と「空港の改革」(民営化)は表裏一体の問題)

 空港の大改革ということで、「航空自由化」と「空港の改革」(民営化)は切っても切り離せません。私に言わせれば、空港が民営化を含めて大きく変わらなければ、これから日本の国内航空も発展を妨げられると思いますので、どんどん民営化して頂きたいと思います。

 

1.コストの安い空港が競争力を発揮する時代

 何故そのような動きになっているかと言うと、一つはコストの安い空港が競争力を発揮する時代になって来ているのです。欧州では、空港ごとに着陸料が違うのは、当たり前になっています。その中で、エアラインはどの空港を選ぶのが最適かを判断しますので、高い着陸料のままでしか経営ができないような空港であれば、淘汰される可能性が非常に高いということです。

 

2.大手から切り捨てられる不採算路線。登場するか小規模航空。

 自由化になれば、不採算路線は大手から切り捨てられます。アメリカでも同様なことが始まりまして、最初の段階で規模の小さな市場は切り捨てられたのです。ところが、安いコストで運航できる新しい会社が、雨後の竹の子のように出来て、そのスキ間をどんどん埋めて行きました。つまり、大手と小さな会社がジョイントする形でネットワークが形成されているのです。ですから日本も、今しばらくは不採算路線が大手から切り捨てになると思いますが、片や先程申し上げた新しい航空会社などが、そういうところを埋めて行くことによって、勢力地図が相当変わって来ると思います。

 

3.大空港が嫌われる米国。空いている空港が有利に。

 そして注目されるのは、アメリカではテロ以降、大規模空港がかなり旅客を減らしているのに対して、小規模空港の旅客は大変増えているということです。

 

4.自立経営を迫られる空港

 これまでは、空港は公共施設なので、倒産するなどということは考えられませんでした。つまり、飛行機が飛んでいる間は、空港は存続するという前提で話が来ましたが、そうはいかなくなって来るのです。空港民営化の波は、ついに日本へ上陸しました。いよいよ成田の民営化が来年から始まる事になりました。その後、関空、中部国際の民営化は時間の問題ということになります。主要空港が民営化されれば、残った空港はそれなりの形を探して民営化に進むだろうと思っています。ということで、空港自体の経営は、はっきり日本でも目前の課題になって来ているという事です。

ロンドンのヒースロー空港は、民営化の後に空港会社が空港と市内を結ぶ鉄道を1,000億円の費用をかけて造ったという端的な例がありますが、そのように、空港自体が自分たちの儲かるビジネスをどんどん探すことになるわけです。アムステルダムのスキポール空港は、1年間で1,3001,600台の車を空港が売っています。ヨーロッパ最大の車のディーラーではないかと言われていますが、「現地で高い関税を払うよりも、空港で関税を払わずに車を買っていった方が得だ」という事で、空港が車を売るという状況になっています。ですからチョコレートから車まで、何でも売っているというのがアムステルダムの空港です。そのように、自由化になれば、いろいろな事ができます。

 

5.ビジネスの幅が広がる航空分野

 最後に、日本で2005年に、また新たな空港の時代がやってまいります。名古屋に中部国際空港が万博に合わせて開港し、神戸にも空港が出来上がります。私は実は、神戸は結構良いのではないかと思っているのです。先日も大手エアラインの方と話しをしていたら、「高い使用料の関空路線をやめて、神戸一直線ですよ」と言っていました。

そして、新北九州空港が2005年に開港します。

また、横田基地の共用化が、うまくすると2005年くらいから始まるのではないかと思います。実は、横田に民間航空が入れるようになれば、首都圏の空港事情は緩和され、日本の空はかなり変わって来るのではないかと思います。

 そして、羽田も2009年に新滑走路ができる予定です。建設費のメドが中々立たないという事なのですが、実は建設費ゼロで羽田にもう1本滑走路を造る方法があるのです。実は羽田には、以前使っていた旧C滑走路と、旧A滑走路という2本の3,000mクラスの滑走路が眠っているのです。方針を転換すれば、3,000m滑走路がすぐにでも使用出来るのです。4本目の滑走路が完成する前に、これらの滑走路を活用する可能性もあるのではないかという気が致します。

 また、茨城県に百里という自衛隊基地がありますが、ここにも滑走路が2006年に出来ますので、首都圏の航空需要は一気に緩和されることになります。ですから、国中で134便の飛行機が運航できる多頻度運航体制が、もう直ぐ日本でも始まることになるのです。ご清聴ありがとうございました。